小気味よいペースで制作を続けるアクションホラー映画『バイオハザード』シリーズも今回で四作目。
前作では原作シリーズと距離を置き、荒廃した世界を独自路線で描いてみせましたが今作はどうでしょうか?
ちなみに原作の『バイオハザード4』は、古城があるようなクラシカルな雰囲気をもつヨーロッパの地方が舞台。
主要クリーチャーもゾンビから別のものへシフトしました。
それでは、レビューを行っていきます。
あらすじ・作品情報
ウイルス感染のまん延で世界は荒廃し、人間は滅びつつあった。
そんな中、生き残りの人間を探して世界中を旅するアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、ロサンゼルスの刑務所に隠れて生き残る人間たちを見つける。
彼らを刑務所から脱出させるため、アリスはアンデッドとの闘いに挑む。
引用元:Yahoo!映画
大人気シリーズ映画『バイオハザード』の第4弾です!
本作品はPG12指定となっています。
『バイオハザードIV アフターライフ』の予告編
『バイオハザードIV アフターライフ』の良かったところ
いきなりフルアクセル!序盤からど派手なバトル
アクションホラーをうたう映画『バイオハザード』シリーズは戦闘がないと成り立ちません。
今作は序盤で主人公アリスが自分のクローンたちとアンブレラの東京支部に乗りこみ、まるでクライマックスのようなどえらい戦闘を見せてくれます。
日本向けのサービスなのか、それとも制作陣がニンジャやサムライが好きなのか不明ですが、刀と手裏剣がお目見え。
次から次へとやってくる特殊部隊を相手に、えげつない戦闘力をアリス軍団が発揮します。
刀による斬撃のほか、双子のように並んで降下しながら銃撃するスタイリッシュなシーンや、ラストへとつながる伏線もここでセットされます。
今度はロスアンジェルス。墓標のごとき巨大ビル群
前作の舞台は荒野でしたが、今回は廃墟化した大都市ロスアンジェルスが舞台です。
アメリカ人は世界が終末を迎えたあとのアポカリプスものが好きですが、今作も廃墟となった都市が崩壊美とでもいうべき独特の雰囲気を醸し出しています。
複雑になりすぎた現代から逃避したい深層心理を反映するように、人間の一部は文明崩壊後の世界に独特の美を感じます。
人類の巨大な墓標と化したロスアンジェルスで生存者が助けを待っており、仲間を捜していたアリスは彼らがいるビルの屋上に飛行機で着陸するのですが、このシーンがこれまた豪快!
希望を失いつつある人々に活気をもたらすような躍動感なのです。
謎の存在アルカディア
前作からの目的地であるアルカディアがとうとうその全貌をあらわします。
アラスカに位置する町かと思われたアルカディア、実は船の名前で各地を回り生存者を集めていたという仕掛け。
しかも、アンブレラが実験用の素材を集めるための罠だったというオチです。
しつこく最後まで謎を引っ張るような真似はせず、中盤からテンポよく事実が判明し、話が展開していきます。
見事な悪役ぶりのウェスカー
原作シリーズでの一作目と五作目、そしてコードベロニカでも暗躍したウェスカーが見事な悪役ぶりを発揮しています。
強さ、冷酷さ、計画性をあわせもつウェスカーは途中からアリス同様超人的な力を手に入れ、映画『マトリックス』のように銃弾をかわす冗談みたいな身体能力を見せつけてくれます。
これは映画オリジナルのものではなく、原作シリーズの五作目に由来するもので「こんなのにどうやって勝つの?」とプレイヤーに絶望感を植えつける異様なムーブでもあります。
金髪オールバックにサングラスというわかりやすさもいいですね。
原作ではその強さの秘密が仕組まれたものだと判明しますが、映画内では言及がありません。
原作シリーズよりは、まだ生身の人間に近い存在かも知れません。
ベースはシリーズ五作目!新たなクリーチャーの登場
今作ではゾンビが更に知恵をつけ、いくらか身体能力を発展させた存在であるマジニが登場します。
原作シリーズの『バイオハザード4』や『バイオハザード5』では、寄生体に乗っ取られた存在が敵として襲いかかってきます。
動きが遅く、噛みつきと引っ掻きだけのゾンビと比べて厄介な存在です。
作品内でも地道にトンネルを掘り続け、生存者が立てこもる元刑務所に侵入するなど、知恵のあるクリーチャーとして描かれています。
そして、マジニやプラーガと呼ばれる寄生体つきクリーチャーのボス格なのが、巨大な斧をもった処刑マジニ。
無類のタフさと腕力を誇る上、黒い覆面をかぶり、背中には杭のようなものが打ちこまれていて不気味な印象があり、ホラー要素を演出してくれます。
その俊敏性でプレイヤーを苦しめてきたゾンビ犬も、ゾンビ同様寄生体に支配された姿で登場し、名作SFホラー『遊星からの物体X』を思わせる変形をして牙をむいてきます。
原作ゲーム内でもかなりの強敵で、頭からばっくり左右に割れて、内側にびっしり牙を生やしたそれを、私はその形状から「先割れワンちゃん」と呼んでいましたが、ワンちゃんという言葉に相応しくない凶暴性とグロさをもっています。
レベルカンストした愛犬家でもない限り、あのクリーチャーをかわいがるのは難しいのではないでしょうか?笑
イケメンすぎるクリス登場。もっとゴリラでもいいんだよ
軍人という設定のクリス・レッドフィールドが今作で登場します。
原作では州警察内の特殊チームという設定なので微妙な違いがあるのですが、そんな設定よりも著しく異なるのが容貌。
そのゴリラ感から「ゴリス」ともネット上で表現されるクリスが、超絶イケメンになっています。
女性視聴者は大喜びする展開ですね。
原作ファンは「もっとゴリラ感があってもいいのではないか?こんなイケメンすぎてはパンチで岩を押しのけるなんて力業が不可能なのではないか?」といぶかるかも知れません。
しかし、描画の進化によりゲーム内でのクリスフェイスはころころ変わっており、いまのものが定着したのは原作ゲーム『バイオハザード5』『バイオハザード6』『バイオハザードリベレーションズ』『バイオハザードマーセナリーズ3D』で同じ顔のモデルを採用したからです。
遅れてやってきた小ネタあります!
原作愛を感じさせる小ネタが映画シリーズ四作目にして登場。
原作ゲームシリーズ一作目でパズル要素だったワシのメダルが登場し、ショットガンの弾として活躍します。
主人公アリスにも「これは趣味」みたいなことを言わせており、完全に制作陣が狙ってやっております。
こういう遊び要素待っていました!
原作ファンへの限定的なサービスではありますが・・・。
ひねりのきいた小ネタもありがたいです。
『バイオハザードIV アフターライフ』のイマイチなところ
東京の感染経過いる?
アリスによるアンブレラ東京支部襲撃につなげるため、東京がTウイルスに汚染される経過を描くシーンが冒頭にあります。
色とりどりの傘がアンブレラの支配力を思わせる象徴的なシーンですが、正直必要性を感じません。
制作陣が取材にかこつけて日本へ旅行しただけ?
まるまるカットしてナレーションから始めても違和感ないです。
むしろ、取ってつけたような不自然さを感じます。
アメリカ人からすれば日本は異国情緒があり、物理的にかなり遠い国です。
世界中に感染が拡大したことを表現したかったのでしょうか?
それとも日本が映画『バイオハザード』シリーズの重要マーケットに入っていることを示す制作陣なりのサービスなのでしょうか?
どちらにしても、必要な描写ではありませんでした。
一作目の再来。都合良すぎる記憶喪失
一作目同様、都合良すぎる記憶喪失が物語に組みこまれております。
今回の被害者はクレア・レッドフィールド。
前作から引き続き登場している原作ゲームの人気キャラです。
同じく原作シリーズの主要キャラであるクリス・レッドフィールドの実妹でもあり、仲の良さも折り紙つき。
二人が再会する感動のシーンが、クレアの記憶喪失のため台無しになっています。
今回は数時間だけ一部の記憶が戻らなくなるガスではなく、変な装置による薬剤の注入。
一作目よりはまともな設定です。
記憶喪失という新たなキャラを獲得したクレア、今回は胸元アピールもなく、存在感は薄め。
薬剤の影響とはいえ主人公を襲ったり、反抗的だったり、登場時薄汚れていたりといいとこがありません。
原作のクレアファンはがっくりきているのではないでしょうか?
トレードマークであるポニーテールもないです。
使い捨て感は健在。クローンアリスと新たな生存者たちの無惨
大量のクローンアリスを登場させたものの、そのまま使い続けるわけにはいかない制作陣は、オリジナルを残してさっさと処分をします。
銃撃戦が想定されるアンブレラ襲撃で、防弾ベストを着用していないクローンたちはバンバン倒れ、挙げ句の果てに冗談みたいな威力の爆弾でクローンたちは一網打尽にあいます。
クローンアリスでこの扱いですから、ぽっと出のキャラがたどる道は推して知るべし。
今作で初登場したキャラは、ナイスガイのルーサー以外さくっと全滅します。
前作同様「視聴者が名前を覚えるころに退場」する流れです。
油断したアリスが通常の体に
超能力を進化させたアリスがあまりにも強くなり、「あっ!このままだとストーリーが破綻しちゃう」と思ったのか、Tウイルス適応により得られた能力が今作の序盤で無効化されます。
行き過ぎたアリス愛VSリアリティの戦いで後者が勝利した形でしょうか?
とはいえ今更感があり、もうアリスにはマーベルみたいなノリでどんどん特殊能力を身につけ強くなってもらい、宇宙や異次元からの侵略者に対抗して欲しかったのですが、なんの前触れもなしに無効化です。
制作陣の狙いぶれてませんか?
突き抜けた強さのままでよかった気がします。
Tウイルス適応による強化が消されたアリス、終盤まで大人しくしているものの、ラストバトルでうかうかと飛び抜けた身体能力をさらしてしまいます。
特殊能力を取り上げたのならアクションシーンの整合性も保って欲しかったです。
アンブレラの規模と姿勢がよくわからない
アンブレラが世界有数の企業というのは、映画の一作目から説明されています。
ラクーンシティを実質支配するほどの大企業なのはわかるのですが、世界中で文明が崩壊したあと、地下の実験施設でウイルスをいじくりまわす研究を続け、民間人を襲撃したり捕獲するその姿勢に疑問をもつ内部の人間はいないのでしょうか?
独裁国家じみた専制政治でも行われているのかな。
それともサイコパスじゃないとアンブレラの幹部になれないとか。
大企業という一言で表すには、あまりにも異常な存在なのです。
『バイオハザードIV アフターライフ』はこんな人にオススメ
『バイオハザードIV アフターライフ』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな人にオススメ
- アクションホラーが好きな方
- 崩壊した都市が好きな方
- イケメン好きな方
- ただのゾンビでは物足りない方
- 謎の巨大船に心ひかれる方
- 映画『マトリックス』みたいな動きが好きな方
- 大量のスレンダー美女が見たい方
『バイオハザードIV アフターライフ』を視聴できるVOD
『バイオハザードIV アフターライフ』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。
オススメVOD
- Amazonプライム・ビデオ
- U-NEXT
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『バイオハザード』シリーズのご紹介
映画『バイオハザード』はシリーズ化されており、全6作からなっています。
シリーズ一覧
- バイオハザード
- バイオハザードII アポカリプス
- バイオハザードIII
- バイオハザードIV アフターライフ
- バイオハザードV リトリビューション
- バイオハザード: ザ・ファイナル
他の作品もレビューしていますので、是非ご覧になってみてくださいね。
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『バイオハザードIV アフターライフ』のまとめ
原作のクリーチャーやキャラを活かしつつ、アポカリプスものとして独自のストーリーを展開させているのが映画『バイオハザードIV アフターライフ』です。
アポカリプス系ゾンビ映画としてはかなり凝っていますし、アクションは見応えがあります。
とはいえ、原作のつまみ食い感は否めず、原作主要キャラのクリスやクレアの扱いもやや雑です。
悪役ウェスカーがいい味を出していたり、小ネタが仕こまれていたりと原作愛は感じられるものの、原作の素材をもてあましている印象ですね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
著書名:オブザデッドレビュー34発
電子書籍サービス:Kindle
紹介文:林立するゾンビ映画をひたすらレビュー!『○○オブザデッド』が多すぎて困っているホラー映画好きのあなたに送る一冊です。