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吸血鬼系ホラー映画!『モールス』のネタバレと評価!

更新日:

高い評価を受けた、スウェーデン製の切ないホラー映画『ぼくのエリ 200歳の少女』を英語版としてリメイクされたのが、映画『モールス』です。

リメイク元と比較した上でのレビューとなりますので、ご了承ください。

一回り規模が大きくなったリメイクは、果たしてうまくいったのでしょうか?

本記事はネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。




 

あらすじ・作品情報

モールス

学校でのいじめに悩む孤独な12歳の少年オーウェン(コディ・スミット=マクフィー)。

ある日、隣に引っ越してきた少女アビー(クロエ・モレッツ)と知り合ったオーウェンは、自分と同じように孤独を抱えるアビーのミステリアスな魅力に惹かれ始める。

やがて町では残酷な連続猟奇殺人が起こり……。

引用元:Yahoo!映画

本作品はスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のハリウッド版としてリメイクされた作品です。

なお、本作品はR15指定となっています。

 

『モールス』の予告編

 

『モールス』の良かったところ

アビーのアンバランスな魅力

今作の鍵となる少女吸血鬼アビーの魅力は、十分に引き出されています。

「人間を超越したミステリアスな存在」という前提を楽々クリアしていますし、アンバランスな魅力が伝わってきます。

 

顔のパーツはそれぞれ大人びた美しさをもっていますが、配置のバランスは子供のそれ。

友達にはなれないと言い放ち、孤独を選びながらも、どこかでつながりを求めている。

大人びた雰囲気と達観した視点をもっていながら、時々こぼれる無邪気さがそこにあります。

12歳のまま生き続ける大人になれない吸血鬼としての要素を、これでもかとばかりに出しています。

 

とある勇者
他にも血を求める際の獣じみた姿勢および悪鬼のような形相と、寂しさにつぶされて今にも泣きそうな表情の対比があって、ここは実に見事だったね!
吸血鬼少女の魅力に関しては、リメイクと元に負けてないね!
はらちゃん

 

肌が凍るような孤独感

主人公の少年オーウェンと、少女アビーを結びつけるのは孤独感です。

オーウェンは体の弱さやクセのある性格、問題のある両親によって、人間社会の中にいても孤独を感じており、アビーはそもそも人間社会とは相容れない、生物としてのルールを逸脱している存在として孤独を感じています。

 

少年は人間社会の中で孤独にさいなまれ、少女は血を得るために人間社会の表面に寄生して、吸血鬼なりの生命を保っています。

二人は自分の異質さを知っており、そのため人間社会に溶け込めずひたすら孤独です。

そんな二人が同年代(?)としてお互いを意識し、小道具であるルービックキューブによって本格的に友情が芽生えます。

そして、少女は吸血鬼である秘密を、少年は秘密の部屋を共有することによって、友情は深まっていきます。

 

世間一般でいう友情とは異なる性質をもっているものの、二人の結びつきは強くなる一方。

吸血鬼の少女アビーは、人間である少年オーウェンの将来を案じ、拒絶するような言動をみせるものの、孤独には勝てず押さえつけてきた無邪気さを解放し、普通の子供のように遊び結びつきを深めてしまいます。

 

吸血鬼と人間という組み合わせでよくみられる「吸血鬼が狩りの対象である人間をひどく下に見る」パターンもなく、本来は超年上のはずである少女が少年に気を使い、栄養として摂取できないお菓子を無理して食べるシーンもあり、オーウェンを大事に思っていることが描写されています。

ひるがえって言えば、そこまで気をつかうほど同年代の無邪気な絆に飢えていたわけです。

 

二人の孤独感は、寒々しい景色と室内の薄暗さによって強調されています。

また会話という面において、少年は親にもじっくり話を聞いてもらえず、少女は子供っぽさが許される同年代とのおしゃべりに飢えています。

そんな二人ですから、モールス信号を使ってまでコミュニケーションをとろうとするわけです。

 

わかりやすい対比

『モールス』では、わかりやすい対比を用いています。

リメイク元にあった雰囲気を重視しながらも、より娯楽的な作品になったといえます。

 

冒頭からアメリカにおけるキリスト教的倫理観の提示があり、生物として「老いる」ルールを逸脱した吸血鬼を悪そのものとして扱っています。

面白いのはキリスト教的な「善と悪」の価値観の中で、信心深いオーウェンの母親は「善」として、他者を傷つけ不老の怪物である吸血鬼が「悪」として定義されているものの、実際に作品内でオーウェンが孤独を感じる理由を作った一因が「善」の母親であり、彼を大事にし守ろうとしたのが「悪」であるはずの吸血鬼だった点です。

世の中、単純に善と悪で割り切れるものではないというメッセージでしょうか。

 

アビーに襲われた刑事が助けを求めて手を伸ばすシーンにも、はっきりとした「人間社会をとるかアビーをとるか」の対比が見られ、感情移入した視聴者はオーウェンの動向が気になって仕方がなかったはず。

 

他にも生物を拒むような寒さと、生命そのものといった様子で湯気をあげてこぼれ落ちる血液の対比があります。

雪による白さと、血の赤さも対照的で、吸血鬼が血を求める際の渇望が描かれているようです。

 

強化されたホラー要素

リメイク元同様、本作も幼い恋心を描いた作品ですが、ホラー映画としての演出は強化されています。

吸血鬼が凶暴化している際の、すさまじい形相も何度か描かれています。

グロテスクな表現についてはあっさり系だったリメイク元と比べると、ホラー、グロ表現はこってりしております。

 

豹変した時のアビーは獣のような低いうなり声を上げ、肌は土壁より粗くなり、その目には「人ならぬ者」を示す白い光彩が宿ります。

また、血を吸われた者が日光で断末魔の叫びをあげながら燃えたり、生首がとんだりと表現が一層過激になっています。

 

とある勇者
リメイク元を知ってる人は、また違った要素に拍手を迎えそうだね。
ホラー要素をより求めていた人は、嬉しいリメイクかもしれないね。
はらちゃん

 

子役がみんな良い

鬱屈としたオーウェン、子供と大人の両面をあわせもつアビー、満点に近いにくたらしさを届けてくるいじめっ子、そしてその取り巻き。

微妙な年頃を演じる子役たちの演技がすばらしいです。

 

特に、いじめっ子のにやけ顔は、弱い者を執拗に狙う人間のいやらしさが出ていて、無邪気な子供とは縁遠い主人公に感情移入できるよう促進剤的な働きをもっています。

 

とある勇者
主人公に感情移入できないとアビーへの親近感が湧きませんし、ラスト近くのアレも「そこまでやる必要あった?」と視聴者どん引き状態になるかもね。
影の殊勲賞だね。
はらちゃん

 

タイムスリップ1983

知っている人には懐かしい、知らない人には新鮮な1980年代のアメリカが舞台とあって、その時代のアイコンとなる様々な小道具が使われています。

その最たるものはルービックキューブ。

時間をうまいこと潰せるせいか、パズルが好きなアビーと、オーウェンの接点となるアイテムでもあります。

 

その他にも古いアーケードのゲーム筐体(中身はミズパックマンでした)や、レトロ感漂う小さなブラウン管テレビがあります。

厚ぼったい電話の受話器も今となっては新鮮です。

リメイク元は青や緑が色彩のベースとなっていましたが、今作は茶や黄色がよく使われています。

1980年代を代表する色なのでしょうか?

 

とある勇者
ルービックキューブはチャレンジしたこともあるけど、クリアできたことないね・・・。笑
映画を観てたらやりたくもなるね。
はらちゃん

 

ちゃんと吸血鬼の伝統ルールに従っている

ホラー要素を盛り込んだ幼い者同士の恋愛物語とはいえ、吸血鬼の伝統的なルールには従っています。

血を吸うと感染し、日光に当たると燃え、そこの住人に招かれないと部屋に入ることができません。

ちなみに、鏡についての描写はなかったです・・・。

 

招かれないと部屋に入れないというルールは、原題『Let Me In』とも関係していて、オーウェンの将来を暗示するものでもあります。

アビーを招き入れずに人間社会の枠内にとどまるか、招き入れて境界線や枠外に飛び出すかオーウェンは選択できるのです。

 

安心してください。出ていますよ

ませたオーウェンの望遠鏡は、しっかりと男性の好物をとらえております。

のぞきの報酬(?)として、熟女の片乳ぽろりシーンが収録されております。

オーウェンくんのことを「のぞきとはけしからん奴だな!」と思いつつも、その収穫に喜び、モラルとのせめぎ合いを経験した男性視聴者もいるのではないでしょうか?

 

『モールス』のイマイチなところ

主人公が問題児すぎる

リメイク元である『ぼくのエリ』に比べると、問題児の側面が強調されている感じがします。

両親が不仲でその影響が出ているとはいえ、変に大人びた風貌やマセガキと呼ばれてもおかしくない行動から無邪気さが感じられず、守ってあげたくなったり応援したくなる要素が減っています。

 

風貌や行動が持つ、いくらか不気味な印象は、子供そのものが恐怖の対象として扱われるホラーなら効果的なものの、感情移入する相手としては不適格。

リメイク元と異なる雰囲気の主人公にしたかったんでしょうが、目論見は崩壊しております。

 

不自然すぎる刑事の一人捜査

アビーが捕まると話が終わるため仕方のないことかも知れませんが、たった一人の刑事による捜査が不自然すぎます。

基本は二人組で行動しますし、突入するのに応援も呼ばないし「本当に刑事なの?」って感じです。

 

とある勇者
本物の刑事ではなく「刑事ごっこにうつつをぬかす変人」であってもおかしくないね。
ここはもうちょっとリアリティがあっても良かったのかなぁ〜。
はらちゃん

 

ゴミ袋おじさん失敗シーンがコントみたい

ほとんどコメディ要素がない『モールス』ですが、ゴミ袋おじさんが襲撃に失敗するシーンは、その外見とドジっぷりからコントのようです。

制作側が狙ったのならともかく、シリアスに徹したいシーンがコミカルになったのはいただけません。

襲われた方も、さっさとクラクションを鳴らせばいいのにゴミ袋おじさんのドジにおつきあいしてバタバタ暴れるだけ。

気が動転しているのは分かりますが、何度も声で助けを呼ぶよりはクラクション鳴らした方が圧倒的に楽な気がするんですが・・・。

もしかして、あの人だけクラクションがない世界で育ったんでしょうか?

 

わざとらしさが残る1980年演出の合成

この物語の舞台が1980年代のアメリカであることを強調するために、冒頭部で当時の大統領であるレーガンがテレビに映っています。

この時のテレビ画面に当時の映像をはめこむ合成がうまくいっておらず、違和感全開の中レーガンが演説してきます。

 

「一発で時代背景と場所を説明できる便利なカット」として使われたのでしょうが、あそこまではめこみ合成に失敗していては、わざとらしさが先行してしまいます。

 

とある勇者
『モールス』は2010年制作の映画なので、技術的にもうちょっと頑張れたと思うんだけど・・・。
そもそもレーガン元大統領のチョイスも、私にはその時代風景も浮かばずピンと来なかったけどね。笑
はらちゃん

 

モールス信号あまり使われてない

タイトルにもなっているモールス信号、残念ながらあまり使われていません。笑

もちろん、物語内で日常的に使っていた可能性はありますが、それだったら映画の中で分かりやすく示唆するべきです。

それもない上に、モールス信号を使っているシーンがほとんどないとあっては「タイトルに偽りあり」状態です。

 

はらちゃん
原題の『Let Me In』をうまく文字られていたら、『モールス』というタイトルをつけなくても良かったんだけど・・・。
確かに『モールス』だけだったら、なんのジャンルの映画かもわからないしね。
とある勇者

 

『モールス』はこんな人にオススメ

『モールス』は下記のような人にオススメできる映画です!

こんな方にオススメ

  • 吸血鬼ものが好きな人
  • 1980年代の雰囲気が好きな人
  • 陰のある恋物語が好きな人
  • 孤独な人を応援したい人
  • 雪景色が好きな人
  • 大人と子供のはざまにあるはかない美しさが好きな人
  • 秘密基地が好きな人
  • 画一的な「善」にとらわれない人

 

『モールス』の口コミ

本記事でご紹介しました通り、クリスチャン要素強めです。
はらちゃん

 

リメイク元の作品よりかはホラー要素は強くなっています。しかし、そもそも全体的にホラー要素は、他のホラー映画に比べたら弱めかもしれませんね。
はらちゃん

 

リメイク版ではありますが、どちらの作品を観ても楽しめますよ!
はらちゃん



 

『モールス』を視聴できるVOD

『モールス』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。

オススメVOD

  • Amazonプライム・ビデオ
  • U-NEXT

 

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『モールス』のまとめ

映画『モールス』についてご紹介しました。

リメイク元である『ぼくのエリ』の設定を踏襲しながらも、ホラー要素や善と悪の対比が強化された作品です。

ホラーとしても恋愛モノとしてもかなり異質な存在ながら、孤独な魂がひかれあう姿を1980年代のアメリカを舞台に美しくもおぞましく描いています。

ラストではオーウェンの選択がしっかり描かれていて、画一的な「善」におもねらない仕上がりになっています。

視聴後、何も頭に残らないようなアメリカ映画と距離を置いた興味深い作品ですね。

総合評価

4.0点 / 5.0点

最後までお読み頂きありがとうございました。




 

この記事の著者の執筆作品

オブザデッドレビュー34発

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