今回は『ブルーに生まれついて』のレビューを行います。
本作は伝記物映画であり、1950年代に多大なる人気を得ながらも、麻薬中毒によりその人生を台無しにしてしまったトランペット奏者「チェット・ベイカー」に焦点を当てた物語となっています。
本作でチェットを演じるのはイーサン・ホークです。
天才的な演奏技術があり、富と名声を得ながらも人生がめちゃくちゃになってしまったチェット・ベイカーの人生を追体験していきましょう。
あらすじ・作品情報
1950年代、黒人のアーティストたちが中心だったモダンジャズ界へと飛び込んだ、白人のトランペッターでボーカリストのチェット・ベイカー(イーサン・ホーク)。
優しい歌声と甘いマスクで人気を博した彼は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」などの名曲を放つ。
しかし、ドラッグに溺れて破滅的な生活を送るようになる。
そんな中、自身の人生を追い掛けた映画への出演を機にある女性と遭遇。
彼女を支えにして、再起を図ろうとする彼だったが……。
引用元:Yahoo!映画
2015年に公開された映画です。
なお、本作品はR15指定となっています。
『ブルーに生まれついて』の予告編
『ブルーに生まれついて』の良かったところ
チェット・ベイカーの壮絶な半生
主人公となるチェット・ベイカーは、1950年代〜70年代まで活躍した実在の人物です。
彼は天才的なトランペット奏者として知られており、当時黒人が主流であったジャズの世界で初めて認められた白人男性だそうです。
さてこのチェットですが、まぁ誰が見てもわかるダメ男なんですよね。笑
天才的な演奏技術がありながらも離婚歴二回のヘロイン中毒者ということで、典型的な破滅型の人間なのです。
そんな彼もひとりの女性と出会い、自分の人生を再建すべく薬物を断ち再びトランペットに向き合うことになるのですが・・・。
結局は薬物をやめられないというダメダメダメなダメ男なんです。笑
普通に考えたらこんな人間には近寄りたくないと思うのですが、やはり彼はピュアなんですよね。
他人とのコミュニケーションや家族との関係性までギクシャクしていますが、音楽にかける情熱や好きなものに対するピュアな心は少年そのものなんです。
信じてくれた人をことごとく裏切りながらも、自分に素直でありすぎるがため破滅していく天才。
私には到底理解できませんが、その壮絶な人生は大変な見所だと言えるでしょう。
イーサン・ホークの演技に注目
チェットを演じたイーサン・ホークの演技が素晴らしいです。
チェットは本当に薬物依存者という感じで常に虚ろな目と喋り方をしているのですが、その目の奥までしっかりと表現していてイーサン・ホークの演技力に驚きました。
中盤以降は再起に向けてチェットの目の色は輝きを取り戻し、声も動きも少しずつ力強くなっていくのですが、終盤ではまた禁断症状が出てかなりいっちゃった目をしています。
物語を通してダメ男ながら変化していったチェットの人間臭さを、絶妙にイーサン・ホークが表現していると感じました。
私は音楽に関して詳しくないのですが、演奏シーンや歌唱のシーンも多分に含まれており、イーサン自身がかなりの練習をしたのだろうというのがすごく伝わりました。
チェットを支え続ける恋人ジェーンと悲しい末路
長い間チェットを支え続けた恋人ジェーンの存在が、非常に微笑ましいです。
彼女はもともと女優志望で様々な映画のオーディションを受けているのですが、ひょんなことからチェットと時間を共に過ごすこととなり、チェットが落ちぶれた時もずっと彼を支え続ける存在となりました。
誰がどう見ても、彼女がいなければチェットは人生を諦めてしまっていました。
それほどに、彼女はいかなる時もチェットを励まし続け、共に笑い共に悲しむ最高のパートナーでした。
だからこそ、彼女との決別を意味したラストシーンが非常に切ないものとなりました。
ジェーンはチェットの人生を狂わせた麻薬をやめるように尽力してくれましたが、結局チェットは薬物から離れられず、再び手を出してしまいます。
そして、それを知った彼女は静かに彼の元を去っていくのでした。
劇中いかなる時もチェットを支えて笑顔にしてくれたジェーンとの決別シーンは、あまりに悲しいものとして映画が終わった後も印象に残りました。
トランペットの魅力を堪能できる
私は音楽に対して詳しくはありませんが、トランペットが持つ不思議な哀愁と孤独感というのが、チェットの内面と共によく表現されていたように感じました。
トランペットは楽団の中でも華やかなパートを担当することが多い印象でしたが、そんなトランペットもボロボロのチェットと共にいると、本当にか細くて情けない音しか出ないんです。
その頼りなさ過ぎる音が落ちぶれたチェットの内面をよく表現しているように感じられました。
実の両親やジェーンの両親、友人知人に至るまで上手くコミュニケーションがとれない彼ですが、トランペットを孤独に練習している姿とその寂しげな音階は彼の等身大な姿を、ありのままに表しているようで印象的でした。
『ブルーに生まれついて』の惜しいところ
説明不足なシーンがちらほらある
本作は全体的にかなり丁寧に描かれており、観ていてスムーズに内容を理解できました。
しかし、いくつかの大事なポイントで説明が省かれすぎていて、少し残念だなと思う点もありました。
まずは、長く時間を共にするジェーンとの馴れ初め。
彼女は終盤までチェットに寄り添い彼のために尽力してくれますが、一体なぜ彼女ほどの容姿と人間性に恵まれた存在が離婚歴二回で、ヤク中のおじさんにそこまで尽くすのかよく分かりませんでした。
間違いなくチェットにとっては彼女はなくてはならない存在でしたが、ジェーンにとってはそうではないように思えました。
この点が不可解だったので、もうすこしジェーンのバックボーンや人間性、そしてチェットとの馴れ初めを描いて欲しかったと思います。
そして、なんといっても唐突すぎたのはラストの決別のシーンです。
これは結構いきなりすぎて、ムリヤリ感がありました。
チェットの一生をかけた晴れ舞台に行けないということで、初めて大ゲンカをしてしまった2人ですが、結果ジェーンは何事もなかったかのように観客席に現れます。
さらに、なぜかこのタイミングでチェットは、それまで治まっていた禁断症状を発症し、舞台裏で再び麻薬に手を出してしまいます。
演奏中にそれを確認する術はジェーンにはなかったはずですが、彼女は全てを悟ったかのように演奏中に彼の元を去っていってしまいます。
事実に基づいているのかもしれませんが、終盤にこの急展開はあまりにムリヤリだったかなと感じました。
結果、そのまま映画は終わってしまうので、かなり取り残された感が残りました。
途中まで仲睦まじい2人の様子が描かれていたので、もう少し伏線や2人の不穏さを描いておいても良かったのではないかと感じました。
『ブルーに生まれついて』はこんな人にオススメ
『ブルーに生まれついて』は下記のような方にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- チェット・ベイカーが好きな人
- トランペットを吹いたことがある人
- 伝記物が好きな人
- 人生の難しさに触れたい人
- 仲睦まじい夫婦を見たい人
- ヘロインの怖さを追体験したい人
- イーサン・ホークの歌声を聴きたい人
とにかくイーサン・ホーク演じるチェットの人間臭さとダメ男っぷりが見事でした。
私は音楽の造詣がないため、劇中でチェットの演奏の変化がよく分かりませんでしたが、彼が日に日にバイタリティを取り戻して行く復活劇は必見でした。
トランペットを演奏したことがある人はもっと楽しめることでしょう。
『ブルーに生まれついて』を視聴できるVOD
『ブルーに生まれついて』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、Amazonプライム・ビデオです。
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※2019年6月時点の情報です。
また、30日のお試し無料期間が付いているので、まずは無料体験から始めてみましょう!
『ブルーに生まれついて』のまとめ
映画『ブルーに生まれついて』について、ご紹介しました。
本作を通じて、50年代〜70年代に活躍したチェット・ベイカーという人物について知ることができました。
全体的に非常に丁寧に作られている感じがあり、非常に好感が持てます。
物語の大半の時間を過ごしたジェーンとの静かな決別は、非常に悲しいシーンとなっています。
なんとなく2人が別れることになるのは予想ができましたが、やはり残念です。
そのままエンドクレジットにて彼のその後が描写されますが、結局麻薬から抜け出せずにお亡くなりになったんですね。
音楽の才能がありながらも人生が台無しになってしまった天才トランペット奏者の物語として、非常に興味深いものでした。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。