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SFホラー映画『スプライス』のネタバレと評価!

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新しい生き物を創造した科学者が、倫理観に苦しめられたり、生み出された生き物と対峙する構成は『フランケンシュタイン』から続く古典的なものです。

遺伝子工学による現代の『フランケンシュタイン』とも言うべき『スプライス』ではどのような結末が待っているのでしょうか?

今回は映画『スプライス』のネタバレと評価を行っていきます。




 

あらすじ・作品情報

スプライス

科学者のクライヴ(エイドリアン・ブロディ)とエルサ(サラ・ポーリー)は倫理に反し、人間と動物のDNAを配合する実験を開始する。

実験は成功し、これまで誰も目にしたことのない新生命体がこの世に生まれ落ちる。

二人はその新しい生命体にドレンという名前を付け、誰にも知られないように育てることにするのだが……。

引用元:Yahoo!映画

2008年に公開された映画です。

なお、本作品はR15指定となっていますので、ご注意ください。

 

『スプライス』の予告編

 

『スプライス』の良かったところ

無機質な研究施設とさびれた農場

研究施設と農場は、主人公の科学者夫妻が実験の産物である新たな生物を、公の目から隠し育てている場所です。

研究所は最新施設ながら無機質で冷たく、放置されていた農場はさびれています。

そもそも新しい生物を創造したのは遺伝子治療の可能性を広げ、病気で苦しむ人々を救うためです。

また、自分の遺伝子を使って誕生したグレンは、女性科学者のエルサにとって子供みたいな存在です。

そんな命をはぐくむ場所が実験第一の研究施設や、ずっと以前に活気が失われた農場だというのが、主人公たちの生命に対する態度や未来を暗示しているかのようです。

 

あえて寒々しく、あまり色彩のない景色の中でドレンを育てているように思えます。

自分たちが作った罪そのものといった存在をあくまで実験体として扱い、罪悪感から目を背けようとしている印象です。

 

しっかりと予算がつぎこまれた作品なので、研究所も立派ですし農場もしっかり作られています。

 

とある勇者
新たな生物を創造してしまったやましさや後ろめたさを表現するのに、無機質でさびしい風景は非常にマッチしているね。
悲劇的な物語のスタート地点そして終了地点としてぴったり!
はらちゃん
とある勇者
こだわりを感じられる舞台設定だね!!

 

キメラ生物(?)ドレンのCG描画

人間を含め、様々な生物の要素を盛りこんだ存在が、ドレンと名付けられた新しい生物です。
(クリーチャーと記述するとモンスターっぽくなるので避けています。)

このドレンは進化の歴史をたどるような形でどんどん成長していくのですが、徐々に人間らしい造形になっていくその姿をCGでうまく表現しています。

 

序盤は奇妙な噛み跡を残す得体の知れないぬめぬめした生き物として気味悪さをあおり、中盤はは虫類とほ乳類を混ぜたようなその姿で動物的なかわいさをまき散らし、いよいよ人間らしくなってきてからは両生類と鳥類の力もあわせもつ、一種神々しいまでの姿を描いています。

思春期女性ドレンは性的な妖しさをあわせもち、独特のなまめかしさまで備えています。

ほとんどCGだと思うのですが、よくここまで描き出せたものだと感心するレベルです。

 

ドレン以外にも、ブレッドとジンジャーと呼ばれる遺伝子改造生物のうねうね感もよく表現されていて、ドレンも含め「もうかわいいんだか気持ち悪いんだか分からない」境地にまで視聴者をいざなってくれます。

物語としての構図はともかく、CGによる生物の描画だけでいったらかなりの高水準を誇っているのではないでしょうか?

 

妖しくも悲しいドレンの存在

いくら科学者夫妻が絶妙な人間ドラマを展開できたとしても、やはり作品の肝となるのはグレンの存在です。

新しい生物が創造されないことには物語が動きません。

人間を含む各種動物の遺伝子をあわせもつグレンの姿は視聴者に強烈な印象を与えます。
 

科学者夫妻の技術と罪の結晶とも言えるドレンは、は虫類のように目の離れたメスで、最初は賢い動物的なかわいさを、中盤以降は人間じみた魅力を放ち、物語を引っかき回します。

しっぽに毒針をもち、捕食者的な一面をのぞかせたかと思うと、猫をかわいがって癒やしを得るシーンもあり、そのアンビバレンスな姿は何種もの動物をまぜこんだキメラ生物にふさわしいです。

 

農場に引っ越したあと、野生に目覚め動物を狩り生肉を食べたかと思えば、女の子らしくおしゃれに目覚めるといった様子。

母親がわりの妻エルサになついていたかと思えば、父親代わりの夫クライヴに好き好きビームを放つという忙しさです。

その扱いづらさといったら人間の比ではありません。(毒針もあるしね)

 

様々な衝動をうちに秘めたグレンですが、初めて聞く音楽にあわせて踊るシーンは本当にしあわせそうで、陰鬱さがつきまとう映画全編の中で、まばゆいほどの輝きを放っています。

動物をモフモフとさわること、そして音楽は理屈のいらない、全生物共通の楽しみなのかも知れません。

 

クライヴを誘惑するほど、妖艶なメスとなっていたグレンも最終盤で性転換。

より攻撃的で屈強な体をもつオスへと変化します。

この性転換もきっちり伏線が仕こまれていて、適当な思いつきでないことがわかります。

性転換による皮肉な結末は悲劇的であると同時に、人工生物創造の物語としては王道の「傲慢な人間が罰を受ける」流れに従っています。

クリエイトされた生き物はなかなかにファンキーですが、構成としてはスタンダードで視聴しやすいのです。

 

エルサの苦悩

科学者として歴史的な発見に取り組み、仕事や生き方に理解のある夫がいて、余裕のある収入がある科学者エルサ。

とても恵まれた環境のように見える彼女ですが、底抜けの明るさや楽しさとは縁遠い、一種の陰をその身に帯びています。

 

農場へ舞台を移した際に、母による幼少時の呪縛が語られ、その影響がグレンに対する態度に見てとれます。

自分の母から受けたのと同じように、自分の子供的な存在であるグレンをコントロールしようとし、夫であるクライヴと温度差がうまれます。

その温度差が夫婦間の絆をほつれさせ、クライヴがドレンに誘惑される下地を作ってしまいます。

 

「この子を守らなきゃ」と母性が目覚めたように見えて、その精神状態はとても不安定。

グレンに対する態度が二転三転しています。

もちろん科学者としての立場もあるので、母親役にだけ集中できないのは分かるのですが……。

 

はらちゃん
科学者として、人間として罪深い妊娠も、上のような経緯や科学者としての傲慢な態度があって、自業自得の印象がありますね。
純粋な悲劇とは一風ことなる、皮肉な物語として幕を閉じるんだね。
とある勇者
はらちゃん
大人むけのうえに後味の悪い作品です。

 

ちょこちょこセクシー要素あり

この作品には、禁じられたものを含むセクシー要素がちょくちょく入っています。

スイッチの入ったエルサが夫にまたがったり、様々な動物の遺伝子をあわせもつ女性グレンの裸身があったり、クライヴがグレンの誘惑に負けたり、男性化したグレンがエルサを襲ったりと、まぁ忙しいです。

 

は虫類のように目が離れた顔、鳥のような逆向きの脚、羽根の出し入れも可能な背中と、ほ乳類を示す胸がミスマッチ。

このいびつながらも美しい姿態がこの物語を象徴しています。

特に淡く光を透かす羽根と、毒針をもつしっぽが特徴的。

まるでグレンが天使と悪魔の両方になれることを語っているようです。

 

『スプライス』のイマイチなところ

やりすぎ感のあるジンジャーとブレッドお披露目会

主人公の科学者夫妻が科学者的にも精神的にも追い詰められるようになったのが遺伝子治療のため造られた新生物、ジンジャーとブレッドのお披露目会です。

悪夢のようなここでの失敗が、夫妻を背水の陣へと追いこみます。

この失敗のレベルがあまりにも高すぎ(?)て、ぶっちゃけギャグのようにも見えます。

 

ホラー表現として、グロテスクとかわいいの間をさまよう新生物同士が、血みどろの戦いを繰り広げるのはわかります。

性別がスイッチしてしまうのも、あとあとの伏線にもなっていますし、そこまで無茶な感じはしません。

ただ、かなり強度がある容器が壊れて、最前列に血しぶきが飛ぶのはやりすぎです。

 

「ホラーといったら血しぶきでしょ!」と制作陣がハッスルしたのかも知れませんが、サービスが過剰すぎてギャグに見えてしまいます。

ホラーコメディを狙っているわけではない、SF要素のあるホラー映画なので、あの大量血しぶき最前列ぶっかけシーンと、その後会場がパニック状態になるのは蛇足なのです。

 

ギャビンが不憫

科学者夫妻の夫クライヴの弟で、マイペースな雰囲気が兄そっくりのギャビン。

おもしろそうなキャラをしているのですが、特に見せ場もなく、あっさりと物語から退場してしまいます。

 

ストーリー、景色、登場人物のほとんどに陰鬱さがつきまとうこの作品において、いい感じで肩の力が抜けたギャビンのようなキャラは貴重なのですが、活用できているとは言えません。

結局、上司に感づかれてしまったものの、終始夫妻の味方で、グレンに対しても驚きこそすれ、そこまで悪い感情をもっていませんでした。

 

ちょっと変わっているけどいい奴であるギャビンをさっくり殺したのは、男グレンによるホラー映画としての虐殺を描きたかったからでしょうか?

口うるさい上司みたいな役どころであれば、一ダース殺しても文句はありませんが、ギャビンは勿体なかったです。

 

本能的に同じ遺伝子いやがるはずでは?

スプライスの皮肉かつ悲劇的な結末を演出するための、男グレンによるエルサとの近親相姦があります。

遺伝子が近い者同士は本能的にいやがるはずなので、都合が良すぎる気がします。

 

エルサの遺伝子を利用したグレンの女性バージョンは、エルサとクライヴが愛し合っているという素地もあり、クライヴとひかれあうのは理解できるんですが、男グレンによる強引な交わりには疑問が生じます。

思春期を迎えた少女が男親のにおいを本能的に嫌うという説もあり、悲劇的な結末を演出したいがために、科学的なリアリティを放棄した印象は否めません。

ところどころ作りが雑な気がしますね。

 

『スプライス』はこんな人にオススメ

『スプライス』は下記のような人にオススメできる映画です!

こんな人にオススメ

  • SFが好きな方
  • 謎の生物が好きな方
  • さびれた場所が好きな方
  • 口うるさい上司をテイクアウトして欲しい方
  • 禁断の愛(?)が好きな方
  • のんびり夫と切れ者妻の組み合わせが好きな人



 

『スプライス』を視聴できるVOD

『スプライス』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。

オススメVOD

  • Amazonプライム・ビデオ
  • U-NEXT

 

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『スプライス』のまとめ

人造生物の悲哀と科学者の罪と罰を現代風に描いたものが『スプライス』です。

ホラー演出や悲劇的な結末のため、科学的なリアリティがおざなりにされている感は否定できません。

しかし、新しく創造されたグレンの出来は見事です!

その成長過程や女グレンの不思議な魅力だけでも見る価値のある作品ですね。

総合評価

3.5点 / 5.0点

最後までお読み頂きありがとうございました。




 

この記事の著者の執筆作品

オブザデッドレビュー34発

著書名:オブザデッドレビュー34発
電子書籍サービス:Kindle
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