タイトルが実直なほどに内容を示唆しているホラー映画が『ミッドナイト・ミート・トレイン』です。
深夜の地下鉄で起こる失踪事件に巻きこまれたカメラマンが、暗黒の世界にとらわれていきます。
タイトルに含まれているミートとは一体何を指すのでしょうか?
それでは、本作のレビューを行っていきます。
あらすじ・作品情報
ニューヨークで暮らす写真家の青年レオンは、ある晩ギャングに襲われていた女性を助けるが、翌日その女性が行方不明になったことを知る。
女性との別れ際に地下鉄で撮った写真に不審な男が写っていることに気づいたレオンは、たったひとり調査に乗り出すが……。
引用元:映画.com
2008年に公開された映画です。
日本ホラー映画界の巨匠である北村龍平監督のハリウッドデビュー作となっています。
『ミッドナイト・ミート・トレイン』の予告編
『ミッドナイト・ミート・トレイン』の良かったところ
無機的な都市の風景
主人公であるカメラマンのレオンが住まうのは大都市ニューヨーク。
彼は芸術家として大成したいという野心をもち、そのチャンスをうかがっています。
とはいえ順風満帆とはいかず、心の中は鬱々としています。
そんな彼の内面を描くかのように、カメラがとらえた都市の街並みは色味が少なく、寒々しい印象を与えます。
それは機能性を重視したことによってうまれた無機質さでもあり、主人公の孤独感と焦燥感とマッチしています。
そして、地下世界で行われる暗闇を使った描写は、このホラー映画がもつ落ち着いた雰囲気を作るのに一役かっています。
クラシカルなたたずまいのホテルや、廃墟となった駅の跡も登場します。


容赦なし!圧倒的なパワーとグロ
殺人鬼じみた大男が物語の核となるのですが、謎のまま引っ張るわけでなく、序盤のうちに顔バレ、住まいバレ、職場バレをしてしまいます。
多少の生活感(?)は出たものの、その行動は謎めいていますし、その巨体や髪型、ぴっちりスーツはとても印象的。
そこまで特殊な道具ではない肉叩き用のハンマーも、この男が持つと、どえらい凶器になります。
えげつないほどのパワーでターゲットに迫り来るのです。
そのパワーは、後頭部を殴打された人間の目玉が文字通り飛び出るレベル。
衝撃の目玉飛び出しシーン以外にも、グロテスクな表現は多め。
解体用の道具を使って、死体を処理するシーンは目を背けたくなるクオリティです。

愛が重すぎ?セクシー彼女マヤの奮闘
序盤からセクシーな雰囲気をまき散らしている恋人のマヤ、ただセクシーなだけではなく献身的な女性で、本業の写真よりも失踪事件へ夢中になる主人公レオンの心配をしてくれます。
彼女の献身ぶりがいかほどのものかと申しますと、写真のためヌードになりかけたり、主人公を捜して独自の捜査を始めるレベルです。
これだけ愛されるレオンは果報者ですが、本人からしたら「マヤの愛が重すぎる」のかも知れません。
恋人そっちのけで事件に首をつっこんでしまいます。
セクシー担当はマヤだけではありません。
レオンが無茶な写真撮影に挑むきっかけとなった美術商のスーザンは熟女の色気を漂わせてますし、大男につかまった名も知らぬ女性も、地下鉄車両の薄暗い照明の下、ほの白い裸体をさらしてくれます。

謎だらけ。おぞましい地下の人肉工場
大男によるただの殺人鬼ものと思いきや、意外なほど話は膨らみます。
まず、乗客の安全を守ってくれるはずの車掌がおかしく、市民の安全を守ってくれるはずの刑事も地下世界の秩序を保つため謎の勢力に協力しています。
古い時刻表を引き継いでいることから、地下鉄を利用した企みが昨日今日始まったことでないことが分かります。
警察も関わっていることから、公権力自体が市民を犠牲にしていることに。
これがアメリカ全土にまで力が及んでいるかは不明ですが、少なくともニューヨーク全域は支配下にありそうです。
人型の地下生物がレオンにつけた紋様も謎です。
何か目印のようにも見えますし、その後レオンの様子がおかしくなったことから、呪いのような力をもつ刻印にも思えます。
マホガニーと呼ばれる大男の胴体に刻まれたものと、異なる形に見えるのも興味深いです。
主人公のレオンが発掘した新聞記事の情報に基づくと、少なくとも100年以上前から地下生物へのプレゼント探しは行われていたようです。
人類は暗闇に対して根源的な恐怖を感じますし、地上に比べ地下世界は未知の領域が多いです。



ホラー映画史上初?肉屋VS肉屋のガチンコバトル
『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスみたいに肉屋的なキャラはそこそこホラー映画に見受けられますが、本職の肉屋VS肉屋は珍しいです。
一方はクラシカルな装いのベテラン大男、一方はミイラ取りがミイラになる状態から恋人マヤを助けるため、正気に戻った新米レオン。
狭い地下鉄車両内を舞台に、激しい格闘シーンが展開します。
アクロバティックな動きはないものの、肉屋ウェポンはどれも凶悪で、その一撃は実に痛そう。
肉叩きハンマーに包丁があるだけで十分な殺傷能力があるのに、それに肉を引っかけるフックまで加わるものだから、戦いは凄惨なものになります。
アメリカ=銃社会という図式はどこ吹く風、鈍器と刃物を駆使したベテラン肉屋VS新米肉屋の戦いが繰り広げられ、その巻き添えとして、レオンの友人ジャーギスや、吊されている死体がどんどん破壊されていきます。
二人が争ったあとは刃物による嵐が通ったかのごとくズタボロに。
ヒグマによる被害を描いた『熊嵐』と呼ばれる作品がありますが、こちらは『肉屋嵐』と言ったところです。
ここぞとばかり血まみれになっていきます。

『ミッドナイト・ミート・トレイン』のイマイチなところ
いい奴ほど早く逝く。主人公に振り回されすぎの面々
多少の商売っけはあるものの、こだわりがそれをしのいでしまうカメラマンのレオンは、どんどん謎の大男と失踪事件にのめりこんでいきます。
最初は自分の写真を世間に認めてもらうため、都市の暗部ともいうべき犯罪現場に首を突っこんでいったのに、途中からは写真そっちのけで探偵ごっこにのめりこんでしまいます。
健気なマヤの心配をよそに、調査に没頭するレオンなのです。
彼が大男を追うことによって、彼女のマヤと友人ジャーギスは巻きこまれ、両者とも悲惨な目にあいます。
特にジャーギスは無惨そのもの。
マヤはヒロイン的なスポットが当てられるものの、ジャーギスはそれがなく、事件にがっちり巻きこまれ、見せ場のないまま退場していまいます。
しかも、友人の戦いに巻きこまれて死亡という、決して名誉にならない最期です。
「いい奴ほど早く逝く」なんて言葉がありますが、それを地でいっています。
マヤも救いのない最期を迎え、身勝手な主人公だけが生き残るという理不尽さです。

大男の謎要素もっと欲しかった?
早い段階で顔バレ、住まいバレ、職場バレする大男マホガニー、あれこれ判明した上でも確かに不気味な存在なのですが、もっと正体不明でも良かった気がします。
特に職場がそのまま食肉加工場というのは安易かな?
生活のためというより、カムフラージュとして職場を使っているのでしょうか。
切除したできものを集めている理由は謎のままでした。
こういう気味が悪いだけの演出はアリだと思います。


闇に包まれて終わるモヤモヤ感
前述した「どこまで謎を明かすか」のコントロールに失敗すると、謎をまきちらしたまま物語が終わることになります。
地下鉄を利用した人肉工場については、不明な点が多すぎでモヤモヤします。
なぜ動物の肉じゃなく、人肉じゃないとダメなのか?
人類がまともな文明を築く前からやっているのか?
地下鉄での人狩りはそんなに効率がいいのか?
人間の遺伝子を組みこんだ肉を培養するだけではダメなのか?
アメリカだけの問題なのか、各国で行われているのか?
視聴しているうちにいろいろ疑問が出てきますが、それが解消されることなく、ミイラ取りがミイラになるエンディングを迎えます。
地下の人型生物については、大男とは逆に謎が多すぎて、消化不良な印象です。
先程も述べましたが、ここらへんのさじ加減が実に難しいです。

『ミッドナイト・ミート・トレイン』はこんな人にオススメ
『ミッドナイト・ミート・トレイン』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- リアル寄りの作品が好きな方
- 都市の無機質さを堪能したい方
- クラシカルな雰囲気が好きな方
- エロとグロの親和性を確かめたい方
- エロエロ彼女最高じゃんと思う方
- 肉屋VS肉屋のガチンコバトルが見たい方
『ミッドナイト・ミート・トレイン』を視聴できるVOD
『ミッドナイト・ミート・トレイン』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。
オススメVOD
- Amazonプライム・ビデオ
- U-NEXT
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『ミッドナイト・ミート・トレイン』のまとめ
地下世界にうごめく人型の何かと、それのため地下鉄で人を狩る謎の勢力を描いたのが今作です。
圧倒的なパワーを持つ大男の攻撃はすさまじく、目玉や首が飛び、肉が裂けるハードなグロ描写が続きます。
都市の冷たさや建物のクラシカルな雰囲気はしっかり出せているものの、情報のコントロールに失敗し、消化不良の内容となっています。
地下生物の細かい設定には目をつぶり、肉屋VS肉屋のバトルやセクシーさ、グロさを楽しむのが良いかも知れませんね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
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