癖のある美女がゾンビ化していく過程を生々しく描いたのが本作です。
モンスターとしてゾンビを配置し、パニックにもっていく通常のホラー映画とはまた違った味付けの作品です。
ゾンビへと変貌する者の視点で描かれた作品ですが、果たしてホラー映画と呼べるほどの恐怖を演出できているのでしょうか?
あらすじ・作品情報
ある夜パーティーで出会った見知らぬ男と一夜限りの関係を持ったサマンサ(ナジャラ・タウンゼント)だったが、その日以来彼女の体は変調をきたし始める。
眼球の充血、皮膚ははがれ落ち頭髪に歯も抜け落ち、不安に駆られたサマンサは医者にかかるが原因はわからない。
症状は悪化の一途をたどり……。
引用元:Amazon
2013年に公開された映画です。
『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』の予告編
『スリーデイズ・ボディ』の良かったところ
ゾンビ要素がなくても怖い体の急激な変化
人間に似て非なる何かに愛する者が変わっていくゾンビ映画的な怖さは、この映画にはありません。
ゾンビへと変化するのが他人ではなく主人公なので、別方向の怖さなんですね。
たとえゾンビ的な要素がなくとも、正体不明の急激な体調不良は怖いものです。
激しい体調不良を経験したことのある人ほど、リアルに感じられる怖さがそこにあります。
特に、初期症状として出る耳鳴りや熱は決して特殊なものではないですが、激しい症状は判断力を失わせ、「自分はこのまま果ててしまうのでは……」と本人を悲観させます。
その後にやってくる下血、目の白濁、簡単に抜けていく歯や爪、髪の毛は何とも不吉で、自分が生者から死体へと確実に近づいていく事実を突きつけてきます。
特に、瞳が濁る異様さは、他人からもすぐ判別できるため、自分の異変を気づかれまいとするサマンサはサングラスで必死に隠します。
白いカラーコンタクトを使ってゾンビを表現するホラー映画もあるぐらいですから、やはり瞳の変化はインパクトが強いです。
受け入れがたい現実が絶望とともに迫ってきます。
ゾンビウイルス(?)と一緒に主人公を蝕む孤独
主人公サマンサは魅力的な容姿をもつマイノリティで、同性愛者ゆえに母親からうとんじられています。
ぎくしゃくとした親子関係から察するに、マイノリティであることを抜きにしても幼少時から良い関係を結べてない様子。
一番の理解者たり得る母親としっくりいっていないサマンサは、同棲を解消された恋人ニッキーからも雑な扱いを受け、精神が不安定に。
元々神経質なところがあるのか、友人たちとも微妙な距離感や緊張感のある関係です。
美女に生まれたら人生イージーモードみたいな風潮がありますが、サマンサはいろいろ苦労しているようです。
母親からうとんじられ、恋人からも大事にされていないサマンサは、孤独にさいなまれ、本来は趣味の範囲にない男と関係をもち、それがゾンビ化の発端となります。
体に異常が出てからは更に孤立化し、自暴自棄となって周囲の人間に猛威をふるいます。
良き理解者がそばにいれば悲劇的な結末を避けられたかも知れない、恵まれない境遇なのです。
危うさ漂うサマンサの美貌
恋人ニッキーには冷たくされているものの、主人公サマンサは美人という設定です。
友人であるアリスや、知人男性ラウリーが言い寄ってくるぐらいの容姿をもっています。
とはいえ、モデルのような職業についているわけではなく、あくまで等身大の美人なのです。
このサマンサ、作中では精神的なもろさが生む危うい魅力を漂わせています。
どこか陰があるというか、健康的な美人にはないはかない美しさをもっています。
精神的な弱さに由来する独特の雰囲気をもっているサマンサは、ゾンビ化によって更に危険な魅力を漂わせます。
ゾンビ化による肉体の崩壊はあるものの、そこはメイクでカバー。
目を隠すための巨大なサングラスも似合っています。
元々健康的とはいえない人物ですし、ゾンビ系女子が好きなマニアにはたまらないキャラクターとなっています。
ゾンビ界では五指に入る美女と言えましょう。
『スリーデイズ・ボディ』のイマイチなところ
自滅もやむなし?サマンサの精神的なもろさ
精神的な不安定さからくる独特の美しさは演出できるものの、サマンサは周囲がもてあます面倒な人となっています。
自傷の過去や恋人ニッキーへの依存から、感情がたかぶりやすい上に依存心が高く、自己評価の低さからかえって攻撃的になる人物として扱われています。
また孤独を耐えられず、麻薬や男に手を出す姿も描かれています。
同性好きであるがゆえにマイノリティに属し、それに由来する孤独に苦しめられている印象ですね。
とはいえ、マイノリティでもたくましく暮らしている方もいるので、もうちょっとサマンサにしっかりして欲しいのが視聴中の私の本音でした。
主人公本人がゾンビに変わっていくため、元々感情移入しづらい作品ですが、サマンサの厄介な性格と行動が、さらに視聴者の感情移入を難しいものに仕上げています。
ひどすぎるみな殺し展開
サマンサに潜んでいたどす黒い部分が噴出したのか、彼女はゾンビ化という異常事態に周りの人間を巻きこんでいきます。
動機や詳しい心境が描かれることもなく、サマンサの身勝手で人々を振り回している印象です。
恋人ニッキーと友人アリスを思わず殺してしまったのは、それぞれに感情的なわだかまりがあったので理解できます。
独占欲や嫉妬心、裏切られたと感じた時の怒りも、サマンサは人一倍強そうです。
しかし、それまで興味のなかったラウリーを誘ったのは、自暴自棄となって感染を拡げようとしているようにも見え、心までモンスターと化したかのようなサマンサの行動がそこにあります。
最後はゾンビになって母親をガブリです。
もうこの時点になると人間としての意識はなく、相手が母親であることを認識しているかどうかも怪しいです。
ただ、酒やドラッグで正体をなくし、不安や孤独をごまかしていた姿が描かれているので、むしろゾンビになり面倒な自意識から解放されたぶん、サマンサ的にはしあわせなのかも知れません。
彼女に巻きこまれた人にとってはいい迷惑ですが。
花栽培要素の必要性あった?
物語の途中まで主人公サマンサが、品評会が開催されるような美しい花の栽培に熱を入れているシーンが描かれています。
自立する手段として栽培を行っていたようなのですが、自活の手段としてはやや特殊で、何かしらの意味がこめられているのではと勘ぐってしまいます。
女性的な雰囲気を持つ美しいものへの傾倒を描き、同性愛者としての素質を描きたかったのでしょうか?
それとも大事に育てていた花が枯れたことによって、サマンサの心に暗黒のどす黒い花が咲くという流れを示しているのでしょうか?
もし、花の栽培が家業であれば、品評会に向けての努力が母との和解につながったと思うのですが、そのような描写はありません。
制作陣にとって身近にリアリティを出せる素材が「花の栽培」だったのでしょうか。
普通の映画ではあまりお目にかけられない設定をもってくるのであれば、それを比喩などで活用して欲しかったです。
てっきりゾンビ化と関係していると深読みしたのは、私だけではないはずです。
『スリーデイズ・ボディ』はこんな方にオススメ
『スリーデイズ・ボディ』は下記のような方にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- 等身大のキャラが好きな方
- ゾンビ好きの方
- ひねった設定が好きな方
- 美女が好きな方
- 生々しい描写に耐えられる方
『スリーデイズ・ボディ』を視聴できるVOD
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『スリーデイズ・ボディ』のまとめ
生きる死体へとじわじわ変化していく様子を容赦なく描いているのが本作です。
ゾンビ相手に生存者が奮戦する通常のホラー映画とは異なる生々しい怖さがあります。
主人公のサマンサは性格に難がある上に本人がゾンビ化していくので、主人公に感情移入してみる一般的な視聴スタイルとはマッチしない癖の強い作品になっていますね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。