今回は映画『タイヨウのうた』のレビューを行います。
歌手であるYUIが主演を務めたことで話題となった映画ですね。
本作は元になった映画があり、1993年の香港映画をベースに設定や脚本を色々いじって完成に至ったようです。
その後ドラマ化され、舞台化され、挙げ句の果てにはハリウッド映画化されたという異色の進化を遂げている作品です。
長く多くの人に愛されるストーリーとは一体どのようなものなのでしょうか?
それでは早速レビュー開始です。
あらすじ・作品情報
太陽の光にあたれない“XP(色素性乾皮症)”という病気の薫(YUI)は、学校にも通えず、唯一の生きがいは夜の駅前広場で路上ライブをすることだった。
そんなある日、彼女は孝治(塚本高史)という青年と出会い、急速に親しくなっていく。
しかし、孝治に病気のことを知られてしまった薫は、初恋も歌もあきらめてしまう。
引用元:Yahoo!映画
『タイヨウのうた』の予告編
『タイヨウのうた』の良かったところ
女優としてのYUIの初々しい演技
本作で初主演となるミュージシャンYUIの演技に注目です。
普段はシンガーソングライターとして活動しているため、演技のほどはいかがかなと思っていましたが、なかなかの好演でした。
もちろん普段演技をしていないため、ぎこちなく見えるシーンも多々あるのですが、それを補って余りある彼女の初々しい魅力があります。
難病「XP(色素性乾皮症)」について知ることができる
主人公である薫が抱える難病があり、病名をXP(色素性乾皮症)と呼びます。
これは日光に当たることが出来ないという病気で、これによって薫は16歳にして昼夜逆転の生活を強いられます。
XPは日光を避けていれば済むという問題ではなく、加齢とともに脳の萎縮や神経麻痺なども伴っていき、最終的には死に至る病となります。
薫は恋い焦がれていた孝治と結ばれ、音楽に対するモチベーションも上がっていきますが、次第に訪れる麻痺に苦しめられることになります。
家族の大切さ
XPという難病と闘う薫ですが、彼女を支える両親の姿がとても感動的です。
特に、父親役である岸谷五郎が好演していましたね。
彼はのっけから短パンで爪を切っているという生活感丸出しのスタイルですが、やはりいざという時は薫のために必死になって頑張ってくれます。
彼女のやりたいことを尊重し、音楽にも興味を持とうとするなど、父親として出来る限りの努力をする姿勢に胸を打たれました。
特に、病院の待合室で1人むせび泣くシーンが印象に残ります。
娘の難病に為すすべがない父親の無念さがよく伝わり、観ているこちらも心が苦しくなります。
薫を囲む素晴らしい人達
本作では意地の悪いキャラが一切登場しません。
薫の両親は当然ですが、薫の親友である美咲や恋人の孝治もどこまでもいいヤツらなんです。
特に、孝治の男前っぷりにはビックリしてしまいます。
元々彼はサーフィン好きでお調子者でしたが、薫と触れ合うことで彼女への興味を持ち、それからは薫のためにあの手この手で彼女を喜ばせようとします。
薫の難病について知った後も、あれほど夢中だったサーフィンのボードまで売りに出し、薫のためにバイトに精を出し、最後の最後まで薫の病気に向き合ってくれます。
私は心根が曲がっているせいか、この一見チャラチャラした孝治が薫に嫌気をさして浮気をし、薫を傷つける日がいつか来るのではないかとハラハラして観ていましたが、そんな心配は無用でした。
YUIの歌が素晴らしい
本作で薫を演じたYUIですが、演技だけでなく歌もしっかり披露してくれます。
普段は儚い存在である薫も、ライブパフォーマンスをするシーンになると一気にスイッチが切り替わります。
彼女の声ってすごく魅力的ですよね。
時折高音が出しづらいのかな?と感じる時もありますが、それでも頑張って声を出そうとする姿がどことなく薫の生き方と重なって見えて、また別の魅力が感じられます。
元々YUI自身が路上ライブ出身ということもあって、地べたにギターを持って座り込む彼女の姿が妙にハマっています。
海での印象的な会話シーン
物語も終盤に差し掛かると、薫はついに意を決して、防護服を着て海に出かけます。
浜辺で車椅子に座っている薫は自分の人生に対して達観した思いでいるのか、静かに海を眺めています。
海辺ではしゃぐ人たちを見て、父親が冗談混じりにこう問いかけます。
「もう面倒臭いからそんなもん脱いじゃおうか?」
それに対しての薫の答えが印象的でした
「嫌だよ。そんなことしたら死んじゃうじゃん。私死ぬまで生きるって決めたんだから。」
薫は自分の人生に対して諦めたわけではありません。
自分ができることを命ある限り精一杯やりきろうと決意していたのです。
この会話は親子のさりげない会話のように淡々と行われますが、その中に潜んでいる薫の強い心が感じられる名シーンです。
本作が長きにわたって愛され続ける理由は、薫の儚くも前向きに生きようとする姿勢にあるのかなと思いました。
『タイヨウのうた』の惜しいところ
どことなくリアリティがない
ストーリーとしては難病に苦しむ16歳の少女の恋愛や夢に関しての物語ですが、なんだかどうにもリアリティを感じられません。
まず、YUIがどう見ても16歳には見えないほど大人びていて、しっかり化粧もして髪も綺麗に整っています。
家の中にいて寝起きでもすごく清潔感のある彼女は、まるで眠り姫のように艶やかなので、その点であまりリアリティを感じませんでした。
私の中で一番の不自然な存在は孝治でした。
薫のことを何も知らなかったのにいきなりゾッコンで、どんな逆境にもめげずに向き合う姿は美しいですが、もう少し現実的な彼なりの葛藤や悩みを見たかったですね。
そもそも、夜中に16歳の女の子が毎晩のように人気のない公園でライブしてるっていう姿に、色々ツッコミたくなってしまいますね。
私はいつ彼女が酔っ払いや痴漢に遭ったり、警察に補導されてしまうのかとハラハラして観ていましたが、そういったシーンは全くありませんでした。
『タイヨウのうた』はこんな人にオススメ
『タイヨウのうた』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな人にオススメ
- YUIが好きな人
- 難病と闘うストーリーが好きな人
- 人に裏切られる話を見たくない人
- 家族の大切さを感じたい人
- 路上ライブが好きな人
- 湘南が好きな人
- 海が好きな人
YUIの魅力あっての映画ですが、彼女が昼間外に出られない分、湘南の海が余計に綺麗に見えます。
難病に苦しみながらも、自分のやりたい事を最後まで貫こうとする儚い少女の頑張りに胸を打たれます。
『世界の中心で、愛をさけぶ』のような純愛モノが好きな人にオススメです。
『タイヨウのうた』を視聴できるVOD
『タイヨウのうた』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。
オススメVOD
- Amazonプライム・ビデオ
- U-NEXT
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『タイヨウのうた』のまとめ
映画『タイヨウのうた』についてご紹介しました。
私は特別YUIのファンというわけではありませんでしたが、この映画で彼女の様々な面を見ることができて今更ながら興味を持ちました。
彼女の演技も歌もソツがなくうまいという感じではないのですが、どこか心を惹かれる魅力がとてもあって画面に引き込まれてしまいます。
ストーリーはかなり単純であっという間にオチも読めてしまいますが、丁寧な作品作りとYUIの魅力で最後までしっとりと鑑賞することができました。
岸谷五郎のパパもいい味出してましたね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。