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効果的な伏線!ホラー映画『ゲット・アウト』のネタバレと評価!

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白人の彼女に招かれた家で、悪夢のような出来事にあうサスペンス寄りのホラー映画が『ゲット・アウト』です。

黒人の主人公は彼女の一家から歓待を受けるのですが、一家の歓待には人倫にもとる目的があるのです。

しっかりとはられた伏線を見逃さずに視聴したい作品です。

なお、本記事はネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。




 

あらすじ・作品情報

ゲット・アウト

ニューヨークで写真家として活動している黒人のクリス(ダニエル・カルーヤ)は、週末に恋人の白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に招かれる。

歓待を受けるが、黒人の使用人がいることに違和感を覚え、さらに庭を走り去る管理人や窓に映った自分を凝視する家政婦に驚かされる。

翌日、パーティーに出席した彼は白人ばかりの中で一人の黒人を見つける。

古風な格好をした彼を撮影すると、相手は鼻血を出しながら、すさまじい勢いでクリスに詰め寄り……。

引用元:Yahoo!映画

『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなどを手掛けたジェイソン・ブラムが製作に携わっています。

全米チャート1位を記録し、興行収入1億ドルを突破したホラー映画です。

 

『ゲット・アウト』の予告編

 

『ゲット・アウト』の良かったところ

印象的かつ効果的な伏線

この作品は印象的で美しいとも言える伏線に満ちています。

わざとらしさを回避するだけでも大変なのに、伏線のシーンが印象的な上、美しくかつ斬新に仕込まれているとあっては、脱帽する他ありません。

 

伏線をきれいに回収するホラー映画はそこそこありますが、伏線のシーン自体に映像的なこだわりを見せる映画は多くありません。

この伏線まわりだけでも見る価値があります。

提示されてきた伏線が謎につながった時の気持ちよさは映画の中でもトップクラスだと思います。

 

映像的な美しさで突出しているのは、闇の中で意識の底に墜落していくシーン。

意識が遠のく様子を独特の感性で表現しています。

動きがスローモーションになるのも、眼前の現実に対応できないもどかしさが出ていて素晴らしいです。

 

何でもない会話の中で、白人一家のところで住みこみで働いている黒人メイドが涙を流すシーンも、涙が流れた理由を知れば哀切極まる描写であることがわかります。

単純な悔しさや悲しさを超越した「魂から発せられたもの」なのです。

 

歴史的事実として存在する残酷さと温かさ

主人公の彼女ローズが属する白人一家は、体を乗っ取る目的で黒人を誘拐しております。

彼らは「黒人に憧れていた」と言っていますが、あくまで肉体的な一面を見ているだけで人格面を無視しています。

人格面にまで憧れを抱いていたなら、そもそも誘拐して「容れ物」として使おうとしません。

その人格面を軽視するからこそ「容れ物」として黒人が選ばれたのだと言えます。

 

乗っ取られた黒人は、船倉に詰めこまれ運ばれる奴隷のように、暗闇の中で身動きがとれず、わずかに見える光を希望とするのみ。

意識だけはあるものの、闇で塗り固められた牢獄にいるかのようです。

この歴史的に「モノ」扱いされてきた時期がある黒人が、今度は「容れ物」として利用されるわけです。

 

苦難の時を経て生き残った黒人たちは連帯感を深め、過酷な現実に立ち向かいます。

お互いを「ブラザー」と呼ぶような独自のカルチャーを築き、その影響は世界に広がっています。

 

とある勇者
親友ロッドが主人公クリスのために東奔西走するのも、その絆があってこそだね。
彼らの歴史と絆に触れられる一作と言えます。
はらちゃん

 

世界征服を狙うわけではない現実的な秘密結社

肉体の乗っ取りは、秘密結社が長年研究してきたものとして扱われています。

世界征服を狙うための荒唐無稽な結社ではなく、人類が夢想してきた不老を目指すための結社です。

 

不老や永遠の命は人類のもつ永遠のテーマであり、それに取り憑かれる結社がいてもおかしくはありません。

世界征服を狙うよりスケールが小さいですが、富、名誉、権力を全てゲットしたあと、欲望が行き着く先が不老や永遠の命なのです。

 

有名なところでは二千年以上も前に中国を統一した秦の始皇帝がいます。

彼は不死の仙薬を四海に求めました。

その際、徐福という道士を国外へ派遣したのですが、その伝説が日本にも残っております。

また、吸血鬼に関する物語が人の心をとらえて離さないのも、その不死性や不老性にも由来していると思われます。

 

主人公クリスの機転と突破力

主人公のクリスは、白人一家に目をつけられた体力や身体能力ではなく、機転によって絶体絶命の危機を突破します。

超自然的な力ではなく、誰にでも備わっている思考能力をフル回転させ、風前の灯火となった状態から脱出します。

 

とある勇者
クリスのいいところは機転が効くだけでなくて、体力も備わり、なおかつ性格も良いね。
幼少時に母を亡くした時のつらい記憶から、繊細な一面はあるものの基本的には友好的で友達想い、彼女想いの青年です。
はらちゃん
とある勇者
ノリも悪くないし、感情移入しやすいキャラクターだね。

 

ローズの見事な変化

これは演じた女優をたたえるべきでしょうか。

それともメイク担当者を評価すべきでしょうか。

主人公の彼女として振る舞う前半と、正体を現して銃を携え追ってくる後半では、ローズの雰囲気がガラリと違います。

 

前半はふわふわの髪の毛を揺らし、じゃれつく子犬といった雰囲気でクリスとイチャイチャし、後半は後ろで髪の毛を束ねて目つき鋭く、表情の読めない猛禽類といった雰囲気でクリスに襲いかかります。

おさなげに、チャーミングにころころと表情を変える前半、冷酷そのものといった感じで銃を手に取る後半も見どころです。

 

とある勇者
この対比がきれいに決まっていて、感嘆のため息が出るほどだね。
一部のマニアには後半の冷酷ローズの方が人気かも知れないね。
はらちゃん

 

マジョリティーへの批判?ただのアップル嫌い?

私がそう見えただけかも知れませんが、マジョリティー(多数派)への批判や皮肉が見てとれます。

ローズの父ディーンがスティーブ・ジョブズみたいな服装をしていて、眼鏡や髪の毛、ヒゲの雰囲気も似ています。

エキセントリックなところや、自信家のところも似ています。

そして主人公クリスが使っているのがマックブックでもアイパッドでもなく、マイクロソフトのタブレット兼ノートPCであるサーフェス。

メジャーなものへの反骨心が感じられます。

 

時代が時代だったら、マイクロソフト=メジャー、アップル=マイナーという図式だったんでしょうが、いまや映画の小道具として出て来るのはほとんどアップル製品です。

筆者は監督が意図的に権威的な父親ディーンをジョブズに似せて、また劇中の小道具としてアップル製品を選ばず、マジョリティーや権威への反発を示したのではないかと推測しています。

単なる偶然かも知れませんが・・・。

 

『ゲット・アウト』のイマイチなところ

きれいだけど読みやすい展開

印象的で美しい伏線によって構成されたこの物語には、展開が読みやすいという弱点があります。

これはあくまでホラー映画であって犯人あてゲームではなく、展開が読めたとしても作品の質が地に落ちるわけではないですが、謎によるハラハラドキドキが減ってしまうのは事実です。

 

主人公が危機を脱してからは、謎が消えてしまったためにクリスを応援するための映画となり、ホラー要素はかなり薄味になります。(血しぶきをともなうアクションシーンはあります)

 

とある勇者
普段からミステリなどを読み、伏線をチェックしていく習慣がある視聴者には早い段階で展開が読めてしまうから、物足りなくなる可能性もあるね。
ホラー映画としては出色の伏線も、謎解き大好き人間からは「ぬるい!」と思われちゃうかも・・・。
はらちゃん

 

白人が悪者すぎる

もともと人種問題を含んで作られた作品のようですが、あまりにも一方的というか、白人が悪者すぎます。

一人ぐらい主人公クリスと心を通わせる白人がいても良かったのではないでしょうか?

彼の味方をしてくれる白人が一人でもいたら、視聴後の爽やかさが違ってきたはずです。

 

瀕死のローズが改悛の情を見せたようなシーンもありますが、心境の変化がきっちり描かれたわけではなく、最後まで冷酷な狩人のまま果てたと考えるのが妥当です。

あそこでローズが本物の愛を伝えていれば、あれだけ勘の良いクリスがそれに反応しないのはおかしいです。

ベタかも知れませんが、ローズには悔い改めて欲しかったです。

 

アメリカ文化や歴史を知らないと細部が分からない

大きな流れや展開は情報がなくても理解できますが、アメリカの文化や歴史をある程度知っていないと細部がわからず、監督の狙いがつかめない作品となっています。

拳をコツンとぶつける仕草や、服装の違いなど、視聴者と主人公に違和感を覚えて欲しいシーンで、アメリカ文化にうとい視聴者だけ置いてかれることに・・・。

 

また、伏線としてなんでもないところでメイドが涙を流すシーンは、黒人に関する苦難の歴史を知っていないと、囚われ人である切なさが完璧には伝わってきません。

とはいえ、予備知識がなくてもエンターテインメントとして十分すぎるほど楽しめる作品ではあるのですが・・・。

 

『ゲット・アウト』はこんな人にオススメ

『ゲット・アウト』は下記のような人にオススメできる映画です!

こんな人にオススメ

  • あっと驚く展開が好きな方
  • 黒人のカルチャーが好きな方
  • 陰謀論が好きな方
  • リアル寄りの作品が好きな方
  • 映像の美しさにこだわる方
  • 演技の見事な使い分けが見たい方
  • ホラー映画の怖さよりもサスペンス的な謎を重視する方

 

『ゲット・アウト』の口コミ

演出がしっかりしているので、観ているだけでぞわっとする感覚にもなります。
はらちゃん

画像からもわかります通り、評価が異常に高い映画となっています。第90回アカデミー賞脚本賞も受賞しています。
はらちゃん

 

やはりこの映画は伏線がしっかりしており、伏線好きの方は楽しめること間違いなしです。私も伏線が大好きなので、次の展開を楽しみに観ることができました。
はらちゃん



 

『ゲット・アウト』を視聴できるVOD

Amazonプライム・ビデオ

『ゲット・アウト』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、Amazonプライム・ビデオです。

月額400円と非常に安価で、多くの映画やドラマ、アニメなどを視聴することができます。

※2019年2月時点の情報です。

 

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『ゲット・アウト』のまとめ

映画『ゲット・アウト』についてご紹介しました。

ホラー要素は薄いものの、印象的な伏線からの鮮やかな展開が楽しめる優れた娯楽作品です。

展開にもたつきがなく、人物描写もこなしており高水準でまとまっています。

アメリカの歴史に詳しければ、より深い味わいと心の揺さぶりを堪能できる一作です。

総合評価

4.5点 / 5.0点

最後までお読み頂きありがとうございました。




 

この記事の著者の執筆作品

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