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音楽映画『The Power of One(パワー・オブ・ワン)』のネタバレと評価!

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今回は映画『The Power of One』のレビューを行います。

1930年代に南アフリカで生まれたイギリス人の少年PKの半生を描いた作品です。

第二次世界大戦を挟み目まぐるしく変わる世界と、常につきまとう黒人差別問題にフォーカスした意欲作です。

アフリカの雄大な自然で育ったPKが、さまざまな困難を切り抜けて生きる姿が魅力の映画です。




 

あらすじ・作品情報

The Power of One

30年代の南アフリカ。

この地生まれの英国少年PKは、両親を亡くし、寄宿学校に預けられる。

リベラルな初老のピアニスト・ドクに、音楽と同時に、大自然の前には人間の優劣は無いと教わり、やがて囚人のコーラスを指揮するようになる。

また幼い頃から、囚人のリーダー格ピートにボクシングを教わって、これにも熟達した彼は、進んで黒人選手と闘うことで人種差別の愚かさを訴える……。

アパルトヘイトの南アフリカを舞台に、ボクシングを通じて人種の境を乗り越えた、聡明な少年の青春を描いた作品。

引用元:Yahoo!映画

1992年に公開された映画です。

「ベスト・キッド」シリーズや「ロッキー5/最後のドラマ」を手掛けたジョン・G・アヴィルドセン監督がメガホンを取りました。

 

『The Power of One』の予告編

 

『The Power of One』の良かったところ

斬新な切り口で描かれる黒人差別問題

ストーリーで一貫して提起されるテーマは黒人差別問題です。

植民地支配時代から続くヨーロッパの先進国に振り回される黒人達が描かれます。

 

そして、物語はイギリス人でありながらアフリカに生まれた少年PKの視点で語られるのです。

黒人の乳母に育てられ、黒人の幼なじみと共に過ごしてきたPKにとっては、黒人に対する偏見は一切なく、黒人を排除しようとする社会の流れと常に戦うことになります。

彼はその偏見のなさから黒人達と親しくなり、やがて彼らにとって希望の存在として崇められるようになります。

 

本作では黒人差別に関しての描写が細かに見られます。

居住区の違いや、黒人と白人の交流、教育レベルの違いや飲み水に至るまで白人専用とそれ以外の人種向けに細かく分けられています。

 

また差別問題だけでなく、黒人同士の種族間の違いや白人同士の種族の違いによる問題なども描かれていて、非常に興味深い内容でした。

全ての社会問題がPKの視点から描かれているので、無理なく分かりやすく物語が展開していきます。

これまで差別される黒人側の視点で描かれる映画などはありましたが、複雑な生い立ちを持つPKの観点で物語が進むという点が面白いです。

 

南アフリカの複雑な歴史を知ることができる

私にとって一番の発見は、本作を通して南アフリカの歴史を知ることができたことです。

南アフリカには“アフリカーナ”と呼ばれるオランダ系移民を主体とした様々なヨーロッパの国からなる民族がいます。

彼らは歴史的にイギリス人に対して不満があり、PKも同じ白人でありながら憎悪の目を向けられることになります。

 

また、同じ白人同士でも出身が違うと男女が結ばれることが難しいなど、このあたり説明がないと歴史を知らない人にとってはかなり複雑で分かりにくいかと思います。

しかし、本作は黒人差別問題だけでなく、こういった白人同士の歴史からなる複雑な南アフリカ事情もしっかり描いています。

 

とある勇者
純粋に映画を楽しめるだけでなく、勉強にもなる映画だね!
映画を観て歴史に興味をもって調べてみて、もう一度映画を観てみると、南アフリカの歴史にかなり詳しくなれるかもしれないね。
はらちゃん

 

なんと可愛い幼少時代のPK

本作を観た人は必ず「幼少時代のPKが可愛すぎる」と思うことでしょう。

善悪の区別もつかず純粋な少年PKが学校でいじめにあい、家族や友人を失いながらも健気に生きる姿がとても可愛く見えます。

 

孤独と絶望に打ちひしがられたPKですが、祖父の友達であるドクと、刑務所内でボクシングを教えてくれたピートに支えられ、心と体を鍛えてもらいます。

ドクからは勉強や音楽を教わり、ピートからは熱心にボクシングを教わる姿が非常に健気で可愛いです。

 

本作は大きく分けて三部構成になっていて、PKの成長度合いに応じてパートが移っていくのですが、幼少期のPKが飛び抜けて可愛いのでこのパートが終わるとすごく残念な気分になります。笑

 

刑務所内で響く魂の歌

ドクが出所するにあたって、演奏会を頼まれた際に、黒人達に歌を歌ってもらうことになりました。

この作詞を担当したのが少年PK。

彼は黒人達にしか分からない言葉で、アフリカーナである看守達を揶揄する歌詞を作り上げます。

同じ黒人同士でも、種族が違えば考え方も違う彼らでしたが、PKの作詞した歌により彼らは団結し、アフリカーナ達の前で彼らを批判した歌を披露します。

 

この歌はいわゆるメロディアスな歌というよりかは民族的な歌で、アフリカの大自然を彷彿とさせられるような不思議な高揚感があります。

彼らの意地とプライドを見せつけたこの歌のシーンは必見です。

 

『The Power of One』の惜しいところ

あまりにワンパターンに訪れる悲劇

PKはその生い立ちから、様々なトラブルに見舞われます。

次から次へと畳み掛ける悲劇に屈することなく立ち向かうPKですが、その悲劇の描き方が序盤からかなりワンパターンすぎた気がしました。

 

少年時代に仲良くなったニワトリやピート、ボクシングジムのオーナーや黒人の仲間たちにマリア・・・。

「一度仲良くなる→死亡」という流れがあまりに続くので、流石に先の展開が読めてしまいました。

死亡するキャラクターには、いわゆる“フラグ”が立っているわけですが、毎回あからさま過ぎて不自然に映りました。

 

例を挙げると、ピートの死亡シーン。

彼は歌の発表会の提案者でありながら、その時になるとなぜか1人だけその場にいません。

そうかと思いきや、ウキウキで1人自分が着る服にアイロンをかけています(他の囚人が全員外に集合しているのに)。

そして遅れて集合しようとしたところ監視に見つかり、撲殺されてしまうのでした。

ストーリーにとって必要な展開とはいえ、あまりに不自然すぎる死亡シーンが多いのが残念でした。

 

もう少し音楽を活かした内容が欲しい

本作では途中まで黒人による歌がキーポイントとなっていて、この歌製作を通じて種族間を超えた連帯感が黒人に生まれます。

しかし、実質的な音楽シーンは中盤で終わり、後半からはボクシングと抗争のシーンがほとんどになります。

 

序盤からPKが母親からピアノを習うシーンがあり、母の死後もドクによって再び音楽を教えてもらうというシーンがありながら、この音楽を活かした場面が中盤以降パッタリと消えてしまったのが残念でした。

せっかく長きに渡ってピアノの教育を受けたPKの、音楽面での活躍も見たかったですね。

 

曖昧すぎるエンディング

エンディングはPKと友人であるギデオンが、夕日に向かって歩き出すというものです。

しかし、私はこれが非常にもったいないと感じました。

 

本作のストーリーでは、PKに対してありとあらゆる困難が降りかかり、終いには黒人居住区の中で殺し合いが行われるに至ってしまったのですが、私は一体どのようなエンディングになるのだろうかと密かに期待していました。

私個人としては、彼が自らの体験を活かして政治家になるか、社会的活動家に至るかの過程を見守りたかったのですが、結局彼の今後は曖昧なまま「The power of one」という言葉でまとめられてしまったのはすごく残念でした。

PKは自らの生い立ちと青年期の経験を糧に、何か黒人のために活動をしてくれると思っていたので、個人的にこの曖昧なエンディングは残念でした。

 

『The Power of One』はこんな人にオススメ

『The Power of One』は下記のような人にオススメできる映画です!

こんな人にオススメ

  • 南アフリカが好きな人
  • 黒人差別問題に興味がある人
  • 南アフリカの歴史に興味がある人
  • 可愛い少年の活躍が見たい人
  • 黒人達の魂の歌を聴きたい人
  • 社会派映画が好きな人
  • ボクシングが好きな人

南アフリカにおける黒人差別問題と、白人同士の複雑な関係性を1人の少年の視点から描いた稀有な一作です。

シリアスな映画ですが、そこまで重いという印象はなく、分かりやすく社会問題を伝えてくれるのでオススメです。




 

『The Power of One』を視聴できるVOD

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『The Power of One』のまとめ

すごく観てよかったと思える映画でした。

古い映画のせいもあると思うのですが、全体的にすごく丁寧で雄大な構図が多く、作品を通して南アフリカの雰囲気がよく伝わりました。

幼少時代のPKがあまりに愛らしく、彼を支えるドクやピートとの関係が微笑ましかったです。

純粋なPKの視点を通して南アフリカの様々な問題を描くことで、黒人差別だけでなく白人同士の争いや軋轢も学ぶことができました。

映画全体のテンポがとにかく良いので、全く飽きずに最後まで観ることが出来たのもグッドでした。

観ておいて損はない一作だと思います。

総合評価

4.5点 / 5.0点

最後までお読み頂きありがとうございました。




 

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