今回は音楽映画『ソウルガールズ』のレビューを行います。
Amazonプライムの紹介画像からすると、妙に明るいパーティーチックな映画を想像していましたが、内容は思ったよりシリアスな展開でした。
この映画はオーストラリアの先住民族であるアボリジニの女の子達に焦点を当てた意欲作となっております。
これは歴史的事実を基にした作品らしく、アボリジニや黒人差別の歴史を振り返る作品としてもなかなか価値があるのではないかと思います。
激動の時代を生き抜いたアボリジニ女性達のサクセスストーリー・・・。
それでは早速レビューを開始しましょう。
あらすじ・作品情報
1968年のオーストラリア。
アボリジニの居住区で生活しているゲイル(デボラ・メイルマン)、ジュリー(ジェシカ・マーボイ)、シンシアは、小さな頃から歌うことが大好きな3姉妹。
いとこのケイと一緒にカントリーミュージックを歌いながらシンガーとして成功をつかもうと奮闘していたが、コンテストに出場しても先住民族に対する偏見や差別から落選させられてばかり。
意気消沈する四人だが、ミュージシャンを自称する男デイヴ(クリス・オダウド)と出会い、彼からソウルミュージックのレッスンを受ける。
引用元:Yahoo!映画
本作品はPG12指定となっています。
『ソウルガールズ』の予告編
『ソウルガールズ』の良かったところ
アボリジニの文化を知ることができる
この映画でスポットを当てられたのは、オーストラリアの先住民族であるアボリジニの少女達。
これまでなかなかアボリジニを主役とした映画を観たことがなかったので、その点はかなり新鮮でした。
舞台は1950年代から1960年代にかけてなのですが、彼女達は白人から差別を受けており(アボリジニも黒人として扱われている)、歌のコンテストに参加しても全く相手にしてもらえない等の不遇な扱いを受けています。
当時のオーストラリア政府には一風変わった習慣があり、アボリジニの中にたまに産まれる肌の白い子供を強引に連れ去って行きます。
そうして白人家庭に養子に出したりして、肌の黒い民族をどんどん迫害していったんですね。
ザ・サファイアズの4人の活躍
映画の主役は4人のアボリジニ女性。
彼女達は元々歌うことが好きで、自分達の生活を変えるためにベトナム戦争に参加するアメリカ兵の慰問に向かうことを決意しました。
当時のベトナムといえば戦争真っ只中であり悲惨な状況が続きますが、彼女達は逆境にもめげることなく明るくソウルフルな曲を歌い続けます。
彼女達自身にも抱える問題があってしょっちゅう仲間割れを起こしてはいるのですが、何だかんだで4人揃った時のパワーは圧倒的です。
現地のアメリカ兵もノリノリになるほどの魅力ある楽曲を披露してくれます。
ベトナムの壮絶な戦争状況を全く感じさせない彼女達の明るくポジティブなエネルギーが、観ている私たちをも勇気付けてくれます。
歴史的事実を挟んだ映像
この物語は史実を基にしているだけあって、当時の世相を表す映像を要所に挟んできます。
黒人差別の様子やベトナム戦争、キング牧師の暗殺時の映像など、観ている私達に彼女達が生きていた時代を無理なくスムーズに伝えてくれます。
“母クマ”として活躍したゲイル
この映画で、“ザ・サファイアズ”のリーダー格として登場するゲイルはとにかく口うるさいです。
肝心の歌のパートも彼女はオイシイ思いをさせてもらえなかったり、恋愛面でも他のメンバーがやたらモテていたりと、割と不遇な面が目立つのでその気持ちも分からなくはないんですが・・・。
とにかく他のメンバーに対しての嫉妬めいたような言動が目立ちます。
反抗期真っ只中みたいな態度で誰彼かまわず周囲に当たり散らしているゲイルですが、そのルーツは彼女が幼少の頃からリーダーとしてほかの女の子達を守っていたことにあります。
その“母クマ”のような愛のあるスタンスが物語の途中から明らかになると、彼女の責任感とメンバーを守りたいと思う気持ちが痛いほど感じられるようになります。
そして、終盤でついに彼女がメインボーカルとして活躍するシーンがあるのですが、彼女が抱えていたいろんな思いがよく伝わるこの場面が、一番の見どころだったように思います。
綺麗なハッピーエンド
思いっきりネタバレしてしまいますが、この映画はハッピーエンドで幕を閉じます。
彼女達はみんなそれぞれの幸せを手にして映画が終わりますが、そこに至るまでの過程はなかなかの苦難がありました。
映画を観ていると、彼女達のあふれんばかりのポジティブなエネルギーで気付きにくいですが、彼女達の行く先々ではいつも困難が待ち受けていました。
戦争真っ只中のベトナムに警備もなしで派遣されたり、黒人差別が待っていたり、大事な場面で銃撃を受けたりと、未知の不安と恐怖が常に彼女達に襲いかかります。
しかし、どんな状況にあっても彼女達のバイタリティはとどまることなく、待ち受ける困難を次々と吹き飛ばしていってしまいます。
そして、ベトナムでの仕事を終えた彼女達は故郷に戻り、ハッピーエンドを迎えるのです。
この映画では、エンドクレジットで彼女達のモデルになった話が記されており、そこでもまた心が温まるエピソードに触れられます。
『ソウルガールズ』の惜しいところ
いろんな意味でもったいない
この映画を観た人の中には、「うーんもったいない!」と思ってしまった方も多いのではないでしょうか?
私がそう感じた理由は、彼女達アボリジニの迫害された苦労が伝わってこなかったからです。
この映画の中でアボリジニや黒人がすごく差別されていた時代背景というのは伝わりましたが、では実際彼女達がどのように苦しめられていたかというシーンが、実はほとんどないんです。
取ってつけたような時代背景のシーンはありますが、彼女達がその中でどうやって生き抜いてきたかという描写がなく、音楽製作の苦労もさほどせずになぜかいきなりスターになっているのです。
この辺りもっともっと丁寧に描いてくれると彼女達の生き様が伝わり、より感動的になったのになと思います。
映画の中ではメンバー達の恋愛描写が多く、迫害されていたという雰囲気よりかは逆に結構いい思いできてたんだなというイメージが付いてしまいました。
アボリジニという素晴らしい着眼点がありながら、それがあまり活きていなかったように感じました。
『ソウルガールズ』はこんな人にオススメ
『ソウルガールズ』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな人にオススメ
- 史実に基づいたサクセスストーリーが好きな人
- アボリジニのパワーを見たい人
- ソウルフルな歌を聴きたい人
- 差別や迫害について知りたい人
- 文化と民族の境界を越えた恋愛劇を見たい人
- ハッピーエンドが好きな人
この映画は差別の歴史やベトナム戦争という悲劇的な背景がありながらも、それを微塵も感じさせないパワフルでエネルギッシュなアボリジニ女性達のサクセスストーリーです。
ストーリーの都合上ムリヤリ誰かが死んだりしないので、安心してハッピーエンドを楽しむことができます。
最後のエンドクレジットまで心温まるエピソードが続くので非常に後味の良い映画となっています。
『ソウルガールズ』の口コミ
ボヘミアンラプソディーや、ソウルガールズを観て、自分の表現したいものが何か、気がついた。
素晴らしい作品は、魂を震わせる。出会えてよかった。— 中畑和夫 (@nakahatakazuo11) January 26, 2019
『ソウルガールズ』を鑑賞。実在したグループ“サファイアズ”を元にした作品で、アボリジニの人種差別を乗り越えるパワフルな彼女たちの姿と歌に泣いたり笑ったり。元気を貰える映画でした! pic.twitter.com/CBhR7RKSMc
— 倉持由香@ グラドル自画撮り部部長 (@yukakuramoti) December 3, 2014
#映画 #ソウルガールズ 姉妹は美女とは云えないがそれぞれ魅力的アル中の白人マネージャーも定型的なダメ男だが好い感じ。故郷の喪失がテーマのカントリーからそれを取り戻す為のソウル故に姉妹が歌うことが映画のテーマにアボリジニの盗まれた世代問題も絡め娯楽性とテーマのバランス好し75点
— タナカさん (@tanaka3845) June 19, 2015
『ソウルガールズ』を視聴できるVOD
『ソウルガールズ』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、Amazonプライム・ビデオです。
月額400円と非常に安価で、多くの映画やドラマ、アニメなどを視聴することができます。
※2019年2月時点の情報です。
また、30日のお試し無料期間が付いているので、まずは無料体験から始めてみましょう!
『ソウルガールズ』のまとめ
映画『ソウルガールズ』についてご紹介しました。
1960年代のアボリジニが主役ということでかなり勉強になった映画でした。
時代背景として彼女達は不遇なはずですが、それを感じさせないエゴとバイタリティがあって痛快なサクセスストーリーでした。
個人的にはせっかく歴史的背景を盛り込んだのだからもっとストーリーの中でそれを活かして、彼女達がその苦難を乗り越える姿を見てみたかったと思います。
事実を基にしたストーリーということで非常に興味深い内容でした。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。