ピエロ恐怖症をもっている女性主人公が、よりによってピエロ姿の何かにつけ狙われるのが本作です。
殺人ピエロによって小さな町は大騒ぎになり夜間の外出禁止令がしかれる事態に。
果たしてこのピエロは生身の殺人鬼なのでしょうか?
それとも恐怖症の主人公がうみだした幻覚なのでしょうか?
それではレビューを行っていきます。
あらすじ・作品情報
極度コルロフォビア(道化恐怖症)の大学生のエマ。
街では悪魔の魂が乗り移り黒い液体を吐くクラウン(ピエロ)が出没し始めていた。
そしてクラウンが殺害日時を告知する風船を届けられた人は、必ず殺されるという事件が多発していた。
ある日、エマと友人達に、あの風船が届いてしまう。
あと2日の命であることを知ったエマは、生き残るために彼女が最も恐れる"それ"と対峙することになるが、それは想像を絶する恐怖の始まりだった―。
引用元:Amazon
2017年に公開された映画です。
アーロン・ミルテス監督が本作で初めてメガホンを取りました。
『キラークラウン 血の惨劇』の予告編
『キラークラウン 血の惨劇』の良かったところ
神出鬼没の気持ち悪いピエロ
奇抜なメイクと服装でおどけるピエロは、遊園地やサーカスでおなじみの盛り上げ役です。
その独特な存在感から、ピエロ恐怖症の人も見受けられます。
海外ドラマ『ボーンズ』の主役であるFBI捜査官ブースもピエロ恐怖症でした。
このピエロ恐怖症を本作の主人公もわずらっており、悪夢にうなされています。
この悪夢や不安定な精神状態による幻覚があり、神出鬼没のピエロが果たして現実のものなのかはっきりとしないまま物語は進行します。
それゆえピエロの正体について視聴者は様々な想像をめぐらすことができます。
殺人鬼なのか、主人公の幻覚なのか、周囲の人々が仕掛けたものか、それとも超自然的なものか……。
ピエロの怖さ、気持ち悪さについては、実際にピエロの格好をしてターゲットを物色していた連続殺人鬼が存在するので、ただ「人間に似て非なるもの」への恐れにとどまらない、史実に根ざしたリアルな恐怖があるのです。
ピエロの正体については終盤明かされるので、煙に巻かれたまま終わる心配はありません。
メガネっ子好きは必見?親友ヘザーの存在
女性主人公エマは、かわいい系にも美人系にも属さない微妙な顔立ちをしており、ピエロにおびえる姿ばかりがクローズアップされ、「精神的に不安定で面倒な女性」扱いされている感は否めません。
そのエマを支えるのが、ルームシェアによる同居人兼親友兼同僚のヘザー。
少々ファンキーなところもあるメガネっ子で、とても友人想い。
ピエロ恐怖症に苦しむエマをサポートします。
かわいい系の容姿をもち、健気に友人のエマを支えるヘザーがいなければ、物語はもっと暗く退屈なものになっていたでしょう。
テーマにもとづく全体の構成
この物語には、不自然なぐらいパターン化したシーンがあります。
それはピエロの魔の手から逃げようとする主人公を、友人のヘザーやジェナが止めるというもの。
町を出て安全なところへ逃げようとする主人公をやたらと引き止めるので、最初は友人たちが何か企んでいるのかと思ったのですが、実際は「恐怖症の克服」というテーマがあるためでした。
そのため不自然に見えても友人たちは、エマを恐怖症に立ち向かわせようとしていたのです。
ラストまで視聴すると、この物語が「恐怖症の克服」というテーマにもとづいているのが分かります。
恐怖症を抱えたエマがひたすらピエロから逃げようとするのに対し、何度も対決を促すようなシーンが出てきます。
そしてエマがもつ恐怖症こそ、黒幕が彼女を狙う理由となったのです。
「fight or flight」(戦うか逃げるか)と呼ばれる、生物としての選択が迫られる状態で、ピエロへの恐怖症をもつ主人公エマはひたすら逃げてきました。
最後の最後、人質をとられた状態で、ようやくエマは「fight」を選び、あっさりとピエロを撃退します。
友人たちや犬の犠牲はあったものの、主人公はどうにか恐怖症を克服するのです。
ホラー映画らしい悪趣味さ(いい意味で)
ホラー映画にふさわしい悪趣味な演出や要素がちょこちょこ見受けられます。
執拗なまでの風船によるメッセージは、風船が膨らみ続ける持続時間を考えたらものすごく手間ひまかかってます。
空気を入れる時間、文字を書きこむ時間を考えると、異様なまでの風船に対する執着なのです。
この風船が毒々しい赤色をしており、画面内で奇妙な存在感を放っています。
人質をとり、ピエロ恐怖症に苦しむ主人公エマに「fight or flight」(戦うか逃げるか)を迫るのも悪趣味です。
「逃げたら追いかけないよ。人質は殺すけど」と精神攻撃をしてくる嫌らしさ。
本作の黒幕はかなり意地が悪いです。
そして飼い犬サムの肉を食わせるという、犬好きおよびヴィーガン激怒の仕打ち。
口のまわりが血で真っ赤になり、泣くことによって目元のメイクが崩れ、エマがピエロっぽい風貌になる効果も兼ねていると思われます。
この悪趣味全開の演出は、視聴者の不快感、嫌悪感、怒りを引き起こす力をもっています。
『キラークラウン 血の惨劇』のイマイチなところ
外出禁止令を出す割に無警戒
殺人事件が起きたため、主人公たちの住む小さな町に夜間の外出禁止令が出されます。
この禁止令が、見なれた日常を非日常に変える緊張感を演出するのですが、一介の保安官にそんな命令出せるのか疑問です。
自治を重んじるアメリカでは、日本のような警察組織がどこにでもあるわけではなく、小さな町では地元に選挙で選ばれた保安官が治安維持を担当しています。
とはいえ地元組織との連携がないまま、単独で禁止令を出せるのでしょうか?
よしんば保安官に夜間の外出禁止令を出す権限があったとしても、ほとんどパトロールしている様子がなく、住人であるランドールにも、その手ぬるさを指摘されています。
せわしなくサイレンが鳴っているような、緊張感を高める演出があっても良かったです。
主人公たち、びびりすぎでは?
いくら主人公エマがピエロ恐怖症を抱えていて、相手の素性が分からない状態とはいえ、昼間にエマ、ヘザー、ジェナの三人が揃っている状況で、ホームとも言える自分の住居で逃げまどうのはびびりすぎです。
結局黒幕の目的は何?
黒幕が悪魔と契約してまで、ピエロ恐怖症の人間を追い詰めていった理由がよく分かりません。
リブゲージと呼ばれたピエロ姿の何かを使役し、恐怖症の克服を強制しているみたいな説明はされるものの、その目的については語られていません。
結局は自ら手を下さないタイプの殺人鬼になっています。
最後はターゲットが恐怖心を克服=自分の死のような図式になっていましたが、使役するリブゲージが反抗的になる前はどうするつもりだったのでしょうか?
ターゲットが恐怖症を克服したら、大きな拍手で歓迎し、それで終わりなのか、それとも自死を選ぶのか、劇中の情報だけでは良く分かりません。
そもそも、いつからピエロ恐怖症の人間を無つけては、リブゲージをけしかける変態プレイをしていたのでしょうか?
ランドールの娘が犠牲になった描写はあるものの、それ以外の情報が不足しています。
断片的に情報が語れられる上、それが黒幕による語りなので、どこまで真実か分かりません。
『キラークラウン 血の惨劇』はこんな人にオススメ
『キラークラウン 血の惨劇』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- ピエロ恐怖症を克服したい方
- メガネっ子が好きな方
- 悪趣味な演出が観たい方
- 小さな町での物語が好きな方
『キラークラウン 血の惨劇』を視聴できるVOD
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『キラークラウン 血の惨劇』のまとめ
映画『キラークラウン 血の惨劇』について、ご紹介しました。
ピエロ恐怖症を抱える主人公が、ひたすらつけ狙われるさまを描いたホラー映画が本作です。
最終盤で黒幕がオカルトの力を借りていたことが明かされるものの、不明な点が多く、すっきり感はありません。
細かい所にこだわらず、ピエロの気味悪さと、悪趣味な演出を楽しみたい作品ですね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
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