ケージの中に入り、海を悠々と泳ぐサメの姿を眺めて旅の記念にするはずが、設備不良のため海底に落とされてしまうサメのパニック映画が本作です。
リアリティ重視の作品で、突然変異で生まれた多頭のサメに追いかけられたり、トルネードに巻き上げられたサメをチェーンソーで迎撃したりしない、至極まっとうなパニック映画です。
光もあまり届かない海底で、どんな物語が待っているのでしょうか?
それでは、レビューを行っていきます。
あらすじ・作品情報
メキシコで休暇を過ごすリサとケイト姉妹は現地の男友達から、海に沈めた檻の中から野生のサメを鑑賞する"シャークケージダイビング"に誘われる。
臆病なリサは尻込みするが、好奇心旺盛なケイトに強引に押し切られ、挑戦することに。
姉妹を乗せた檻はゆっくりと水深5mの海へと降りていく。
初めて間近で見るサメの迫力に大興奮の二人だったが、悲劇は突然訪れる。
ワイヤーが切れ、檻が水深47mの海底まで落下してしまう。
そこは、無線も届かない海の底。
助けを叫ぶ声は届かない。
急浮上すれば潜水病で意識を失ってしまい、海中に留まればサメの餌食になることは必至。
ボンベに残された酸素はあと僅か。
全てが極限状態の海底での脱出劇に、生還という結末はあるのだろうか!?
引用元:公式サイト
歴代サメ映画8位の大ヒット映画です。
『海底47m』の予告編
『海底47m』の良かったところ
実際にありそうな生々しい設定
サメが登場するパニック映画の中には、娯楽性を重視したぶっとんだ設定のものが多いですが、本作は実話ベースでもおかしくないほどリアルです。
姉のケイトと妹のリサが事故に巻きこまれる経緯も生々しく、とことんリアル寄りの作品となっています。
妹リサの失恋やそれを励まそうとする姉、現地人との出会い、ケージ内でサメを眺める観光へのお誘いという一連の流れがあります。
その中で姉妹の人物がきっちり描かれているので、感情移入しやすい作りとなっています。
登場人物が少なく、実質的に閉鎖された状況を描く本作では、主人公に感情移入できないと折角のハラハラドキドキを100%味わうことができません。
その点、海中に入るまでに人物描写を行い、姉妹の人柄や絆を示すことに本作は成功しております。


サメだけではない多重的な恐怖
恐怖を演出してくれるのはパニック映画界の人気者であるサメですが、それ以外の要素も、主人公姉妹と感情移入した視聴者をじわじわ追い詰めていきます。
主役のサメは、それを観光資源として利用しているだけあって、うようよ泳いでいます。
その造形もリアルで、下から襲ってくるという生態も描かれています。
サメと接触した際のすり傷による出血で、更にサメが集まってくるという流れもリアルで怖いです。
そして、酸素ボンベ残量計が無慈悲に示す窒息への恐怖。
水深10メートルにも満たない位置までサメ観察ケージを降下させる予定だったので、落下したあとの水深47メートルで悠々活動できる装備ではありません。
主人公姉妹はうろつくサメだけではなく、酸素不足にも悩まされることになります。
どちらも致命的な問題です。
それに加え、光のあまり届かぬ海底においていかれたという絶望感が、無線の不通によって醸し出されます。
電波が届く距離まで浮上すると、船長を通じて情報が入るものの、サメから身を守るためにケージに戻ると通信が途絶えるという歯がゆい状況です。
不安から「見捨てられたのではないか?」と疑心暗鬼になるのもうなずけます。
光がゆらゆらと揺れる海面は見えているのに、潜水病を防ぐため一気に浮上できないシチュエーションも、精神的に辛くもどかしいです。
サメがいない海域であれば、時間を使いながら浮上すれば難なく戻れるのに、観察の対象であったサメが脅威となっています。
観察どころではありませんね。
とどめに窒素酔いという恐怖。
新たな酸素ボンベを投下してもらい、救助チームがくるまで、のんびり海底にあるケージで待つこともできません。
新たな酸素ボンベを手に入れ交換できても、幻覚症状をともなう窒素酔いが主人公たちにダメージを与えます。

神秘的な海中映像
おおよそのサメパニック映画は、船の上や陸地からの眺めが多いです。
本作は海上からの眺めより、海中からの眺めが多く、光を使った神秘的な映像が魅力的です。
海底で不安に耐えている姉妹にとって、地上の存在を示す日光は希望そのもの。
しかし、それは淡く遠く、幻のようにゆらめいて、主人公の手が届く距離にはありません。
サメと絶望が覆う海底から見える光が、なんともはかなく美しいのです。
もちろんサメの存在も忘れてはいけません。
シャープな姿をもつ、一切話が通じなさそうな顔のサメが、姉妹のすぐ近くをぬらぬら通ります。
海中メインのサメ映像は新鮮で、粗が目立たないためか、とてもリアルに見えます。
海中にいるということで、他のサメ映画に比べても撮影距離が近く、ぬっと現れるサメの迫力は圧巻です。
伏線も用意されたオチ
本作はかなり絶望的なオチが用意されていますが、ちゃんと伏線がはられているため、取って付けたような不自然さはありません。
一部のサメパニック映画にある行き当たりばったりのエンディングとは一線を画します。
(謎理論もありません)
にっくきサメにガブガブ噛まれながらも、どうにか姉妹そろって海上に引き上げてもらい、大けがはしたものの一命を取り留めた…………
と思いきや、衝撃の展開が待っています。
衝撃的ではありますが、決して不自然はなく、油断した視聴者を海底47メートルの絶望に叩きこみます。
姉妹に感情移入し、顔をしかめながらサメに噛まれるシーンを耐え、船の上に引き上げられた二人を見て、安心した視聴者をもてあそぶようなオチなのです。
視聴者が姉妹に感情移入していればしているほど効果的な衝撃展開なので、制作陣がきっちり前半で人物描写をするのもうなずけます。
姉のケイトに関する描写や言及はありませんが、出血状態で「サメに囲まれた」という通信があったことから、その安否は絶望的でしょう。
妹のリサも窒素酔いがあったことから、何かしらのダメージが身体に残る可能性が……。

『海底47m』のイマイチなところ
変わり映えしない海の景色
最初は新鮮そのものだった海中からの映像も、それが一時間近く続くとあれば、視聴者も飽きてきます。
主人公姉妹が海底にケージごと落下してから、物語としてのエンジンがかかります。
それ以降はラストまで海中映像が続くので、変化に乏しいです。
気を失ったようなシーンがちょくちょくあるので、その時に姉妹の絆を示す過去エピソードなどを差しこんでいれば、うまく変化をつけられた上に、まだ海底にいるという絶望感もあわせて演出できたのではないでしょうか?
迫力満点のサメも、大体同じアングルでやってくるので、どうしても見なれてしまいます。
サメと見せかけておいて、他の海中生物みたいなフェイクを入れればより海洋感が増し、アクセントもつけられた気がします。

リサのがんばりを無かったことにする残酷さ
活発な姉ケイトに対し、劣等感に悩む妹リサ。
そのリサが姉を救うべく自らアクションを起こし、頭脳派として活躍、浮力を利用してケージから脱出するという頑張りが、無残にも無かったことにされています。
自分のことを卑下しているリサが自分の殻を破り、姉のために奮闘する感動的な流れが、「はいダウト!」みたいな扱いに。
妹リサにがっちり感情移入していたに人は、心えぐられる展開です。
残酷すぎやしませんか?笑
仲良し姉妹が悲惨な目にあいすぎ
名の知れたホテルが手配するしっかりとした業者ではなく、現地で知り合ったよく分からない業者を観光に使ったのは落ち度かも知れません。
しかし、それ以外姉妹に悪い点はなく、その行状にふさわしくないほど悲惨な目にあいます。
特に、ケーブルを繋いでからの再落下はむごいです。
元々整備不良のいい加減な業者だったので、また事故が起きる可能性はあったのですが、ぬか喜びさせたあと海底に突き落とし、あまつさえ負傷させる始末。
制作陣は姉妹キャラに恨みでもあるのかな?笑
姉妹の性格が悪かったら、ひどい目にあっても視聴者的にはいくらか納得できるのですが、ちょっと浮かれているぐらいで問題行動を起こしたわけではありません。
善男善女にも、無慈悲に事故がやってくるという現実を見せたかったのでしょうか。
しっかりと感情移入して視聴する人には、かなりきつい内容です。
『海底47m』はこんな方にオススメ
『海底47m』は下記のような方にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- リアリティ重視の作品が好きな方
- 海中の映像が好きな方
- 海におけるサメ以外の恐怖も味わいたい方
- 作品にほどよく感情移入できる方
- 姉妹でメキシコの海に観光する予定のない方
『海底47m』を視聴できるVOD
『海底47m』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、U-NEXTです!
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『海底47m』のまとめ
映画『海底47m』について、ご紹介しました。
リアリティを重視し、海中におけるサメ以外の恐怖もしっかり描いたサメパニック映画が本作です。
深く主人公たちに感情移入する視聴者にとってはハードな内容となっており、胸が重たくなるエンディングが待っています。
善人が助かる娯楽映画的なフォーマットには従わず、現実の無慈悲さを突きつけるような内容になっています。
息が詰まるようなパニック映画としての質は高いものの、重たい視聴感をあわせもつ作品ですね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。