今回は音楽映画『ヘアスプレー』のレビューを行います。
本作は1988年に同名の映画がすでに存在し、その映画を基にしたミュージカル劇を、さらに基にして作られた映画という、なんだか少しややこしい経緯の映画です。
しかし、言い換えればそれだけ形を変えながらも長く愛される作品だということなのでしょう。
ノリノリでハッピーな歌とダンスだけでなくストーリー性もしっかりしており、作品の根底には深いテーマが存在している映画です。
それでは早速レビュー開始です。
あらすじ・作品情報
おしゃれとダンスに夢中な女子高生トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)の夢は、人気テレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」のダンサーになること。
ある日、番組のオーディションが開催されると知ったトレーシーは、自分と同じく大柄な母親エドナ(ジョン・トラヴォルタ)の反対を押し切り、オーディションに参加する。
引用元:Yahoo!映画
『ヘアスプレー』の良かったところ
トレイシーを演じたニッキー・ブロンスキーの魅力
本作の主人公であるトレイシーを演じたニッキー・ブロンスキーの魅力が凄まじいです。
もうこの映画は、彼女をキャスティングした時点で勝ったと言っても過言ではないでしょう。
まん丸とした体にどデカイ髪型、濃いー顔に満面の笑みでダンスをぶちかます彼女のイメージが頭から離れません。
終始癖のある笑顔でニヤニヤしながら、誰彼構わず絡んでいく人懐っこさが魅力です。
本作が生み出すハッピーでコケティッシュな雰囲気は間違いなく彼女から放たれるものであり、作品全体の色調をニッキー1人で支配しているような印象があります。
一歩間違えると100%コントになりそうなビジュアルと立ち振る舞いですが・・・。笑
彼女自身の歌唱力のおかげもあって、しっかりとしたミュージカル映画に仕上がっています。


トレイシーの母親役にはまさかの・・・
本作を初見で見た人は、トレイシーの母親エドナに妙な疑問を抱くと思います。
私もその1人でした。
何かおかしいんですよね。
体型とか顔の濃さとか声のトーンとか・・・。
そうなんです!
エドナを演じたのは名優ジョン・トラボルタなんです!
一体どういう経緯でこの役を受けたのか定かではありませんが、トラボルタの母親がいい味出しているんです。
トラボルタが母親役をやるということで、そのインパクトは絶大ですが、彼女(彼)はそのビジュアル以上に大きな活躍を劇中でしてくれます。
はじめは自分自身が太っているというコンプレックスもあって、同じく肥満体型であるトレイシーが外の世界に出ていくことを良しとはしませんでした。
しかし、トレイシーがその明るさでどんどん自分の道を切り開いていく姿をみて、彼女自身も変化していきます。
エドナも家を出てダンスし、はからずも黒人のデモに参加し、そして最後にはTVショーの舞台にまで上がってしまいます。
本作では様々なキャラクターが成長をし変化していきますが、このエドナほど180°人生が変わった人物はいないでしょう。



明るい雰囲気ながらも深いテーマ
本作の舞台は1962年のアメリカ・ボルチモア。
トレイシーは毎日『コーニー・コリンズ・ショー』を楽しみに、天真爛漫に生きています。
本作では明るいポップな雰囲気ながらも、その時代に抱えていた問題などをしっかりと描いています。
この時代はやはり黒人差別や彼らの生み出す“ブラックミュージック”に偏見があったのでしょう。
白人が黒人のダンスや歌にハマっていくのを良しとしない人も多く見られます。
その際たる人物は番組のプロデューサーであるベルマです。
黒人が活躍する舞台を排除しようとする彼女に対して、トレイシーと黒人達はデモを起こし警察と衝突します。
トレイシーは黒人側に立ち彼らの素晴らしさ、ブラックミュージックの素晴らしさを訴えます。
明るい映画の雰囲気の中に「黒人差別」というテーマがしっかりと存在していて、観ていて考えさせられるシーンも多々あります。
また黒人差別だけでなく、トレイシーの母であるエドナの肥満をはじめ、登場するキャラクター達のありとあらゆるコンプレックスや悩みを笑い飛ばしてしまうようなエネルギーがトレイシーにはあります。
トレイシー自身も憧れのTVショーの中の人物になりたいと愛用していたヘアスプレーの使用を終盤には止め、ありのままの自分であろうとします。
「人と違ってるのがいいことなの」と高らかに歌うトレイシーの姿からは、本作が単なるミュージカルではなく、コンプレックスや他人と違う自分の良さをありのまま受け入れようという前向きなメッセージが込められているように思えます。
家族と夫婦の愛
トレイシーと母親のエドナの親娘関係も感動しますが、それに負けないくらい父親のウィルバーも魅力的。
トレイシーの夢を素直に応援し、太ってしまっているエドナに対しても変わらぬ愛を注ぎ続けるカッコイイパパです。
多分そんなに儲かってないだろうなと思えるおもちゃ屋さんを経営しているウィルバーは、ふざけているようなシーンもありますが、トレイシーが弱気になった時はしっかりと支えてあげるという良きパパぶりを見せてくれます。
愛と正義に生きるトレイシーの根源がここにあったと納得できるような家族愛・夫婦愛が素敵でした。
『ヘアスプレー』の惜しいところ
敵役が役不足すぎる・・・
本作で根底に描かれるテーマとして「黒人差別」が存在します。
これはトレイシーの母であるエドナやトレイシーの親友ペニーの母親も、ある程度持っている考えです。
そして、本作で最もトレイシーと敵対する役として、番組のプロデューサーであるベルマがいます。
彼女は黒人が活躍することを良しとせず、終いには自分の番組から黒人がダンスする“ブラック・デー”の廃止を宣言してしまいます。
ベルマは黒人に対する差別とトレイシーの人気に対する嫉妬のために、あの手この手を使ってトレイシーの邪魔をしようとします。
しかし、ハッキリ言ってしまうと、彼女は全くもってトレイシーの敵ではありませんでした。
本作において「黒人差別」がテーマにありながらも、実際に差別をしている人は劇中にはあまりいなくて、トレイシーを中心にあっという間に他の白人達も黒人の味方になってしまいます。
こうなってしまうと、映画の盛り上がりとして張り合いがなくなってしまい、結果せっかくのテーマ性が薄くなってしまったように感じました。
『ヘアスプレー』はこんな人にオススメ
『ヘアスプレー』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな人にオススメ
- ミュージカル映画が好きな人
- 個性的な主人公を見たい人
- 1962年のアメリカ文化に興味がある人
- 差別問題に興味がある人
- ジョン・トラボルタの怪演が見たい人
- ノリノリな音楽が好きな人
- テーマ性のある映画が好きな人
- 夫婦愛を見たい人
トレイシーのバイタリティ溢れるキャラクターと、彼女を中心に周囲が変わっていく様が魅力の映画です。
単純な歌とダンスのパフォーマンス以上に深いテーマが根底に流れています。
『ヘアスプレー』の口コミ
アマプラで #ヘアスプレー 視聴
明るく楽しいミュージカルというだけでなく人種差別残る時代背景もしっかり描いていて良かった〜!どこかで見た顔なんだけど…で最後までジョン・トラボルタと気づかなかった私😂 この笑顔可愛すぎ pic.twitter.com/gIdpKNzpe4
— tamtam (@xxxtamtam) 2019年2月6日

私の #生涯ベストワン映画 #ヘアスプレー。
私が差別をするような人間にならないで済んだこと、自分を人と比べることなく生きてこられたこと、全部ヘアスプレーのおかげです。
制作に携わった全ての人に感謝と敬意を込めて。#映画好きと繋がりたい #映画好きな人と繋がりたい #hairspray pic.twitter.com/fyzrBANDfu— 胡桃 (@wannnabein80s) 2019年2月2日

『#ヘアスプレー』
フォロワーさんにオススメして頂いたので、アマプラで鑑賞😎
グンモーニン、ボルティモア〜🌞から心を完全に奪われました😳
「人種差別」という重たいテーマを扱っているけれど、たくさんの愛で満たされていて、ひたすら幸せになれる映画😍😍
ザックのルックスも心もイケメン🙈🙈 pic.twitter.com/vxtjiW31yj— あんず🎬 (@anzurickman) 2019年2月2日

『ヘアスプレー』を視聴できるVOD
『ヘアスプレー』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。
オススメVOD
- Amazonプライム・ビデオ
- U-NEXT
Amazonプライム・ビデオ
Amazonプライム・ビデオは月額400円と非常に安価で、多くの映画やドラマ、アニメなどを視聴することができます。
※2019年2月時点の情報です。
また、30日のお試し無料期間が付いているので、まずは無料体験から始めてみましょう!
U-NEXT
U-NEXTの月額料金は少し高いですが、毎月1,200ポイントが付与され、さらに最新作品を他のVODよりいち早く視聴することができます。
※2019年2月時点の情報です。
こちらも、31日のお試し無料期間が付いているので、ぜひ体験してみてください。
『ヘアスプレー』のまとめ
映画『ヘアスプレー』についてご紹介しました。
本作品は、すごくコケティッシュかつエネルギッシュな作品に仕上がっていました。
ただひたすらトレイシーのコミカルさに目が釘付けで、気がついた時には黒人差別と戦うという深いテーマがあり、自然と彼らを応援してしまいました。
前向きに生きるメッセージが根底にあり、トレイシーはそれを主張するのに非常に説得力のある女の子でした。
他のミュージカル映画の主人公と違って、トレイシーは明らかにコンプレックスがありそうなビジュアルながらも、前向きであり続けたことがこの説得力に繋がったのかなと思います。
映画を観終わって尚、トレイシーの濃いスマイルが頭に浮かび続けています。
この強烈なキャラクターと映画の世界観が、この作品だけで終わってしまうのは勿体無いですね。
続編かそれとも何か違う形で別の映画の中でまた彼女に会いたくなる、そんなクセになる魅力が彼女にはありました。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。