ビデオゲームシリーズ『サイレントヒル』の世界を映画化したものが本作です。
前作『サイレントヒル』の続編にあたり、原作ゲームの『サイレントヒル3』をベースにしております。
前作は原作ゲームのホラー要素をしっかり再現できていましたが、今作の出来はどうなっているのでしょうか?
あらすじ・作品情報
18歳の誕生日を間近に控えたヘザー(アデレイド・クレメンス)には幼少時の記憶がなく、父親(ショーン・ビーン)と共にほうぼうを渡り歩く生活を送っている。
彼女は毎晩サイレントヒルという見知らぬ街で、恐ろしいモンスターたちに追われる悪夢にうなされていた。
そんなある日、突然父親が自分の前からいなくなってしまい、やむを得ずヘザーはサイレントヒルを目指す。
引用元:Yahoo!映画
2012年に公開された映画です。
なお、本作品はPG12指定となっていますので、ご注意ください。
『サイレントヒル:リベレーション3D』の予告編
『サイレントヒル:リベレーション3D』の良かったところ
気色悪いだけではないクリーチャーたち
ホラーゲーム『サイレントヒル』シリーズといえば、奇怪なクリーチャーたちが有名です。
同じくホラー系のビデオゲーム『バイオハザード』シリーズは、ウイルスによって生物が科学的に変異したようなものが登場します。
原作の『サイレントヒル』シリーズは、悪夢や妄想がそのまま具現化したようなデザインと性質のクリーチャーが登場します。
もちろん、本作に登場するクリーチャーも原作ゲームのものが使用されています。(一部例外あり)
原作シリーズを代表するレッドピラミッドは、三角形の異様な頭と戦闘能力を見せつけてくれます。
すさまじい腕力と破壊力、そして物語内の役どころは闇にすまうヒーローのようでもあります。
顔のないナースたちは「動いたら、それを感知して襲ってくる」というホラー演出を担いつつも、ナイスバディをさらすセクシー要員でもあります。
上記の原作人気クリーチャーの再現度はなかなかのものです。
他にもマネキンの集合体にも見えるクリーチャーは、殺人ロボット的な存在感と怖さがあり、ゴキブリのようにカサカサ動く様子も視聴者の背すじをぞわぞわさせます。
女司祭の秘められた欲望が形となったような丸ノコレディ(仮名)も、趣味の悪さとエロさ、戦闘力の三拍子が揃ったインパクトの強いクリーチャーです。
クライマックスでは、レッドピラミッドVS丸ノコレディ(仮名)の激しいバトルがあり、ホラー好き原作好きだけではなく、怪獣大決戦みたいなノリが好きな視聴者も楽しませてくれます。
エンディングでもオマケのクリーチャーバトルの映像が流され、ちょっとおトク(?)な構成になっています。
精神をむしばむような恐怖演出
原作でも重要な場所である遊園地は、悪夢のような状況ながら、どことなく美しさを感じさせる幻想的な面もあり、この映画がもつ複雑怪奇な内容を示してくれます。
特に炎のメリーゴーランドやアレッサの形相やメイクは、地獄を思わせるすさまじさで、ただグロいだけのホラー映画ではないことを物語ります。
そして前作同様、映画『ヘルレイザー』シリーズに着想を得たであろう異界化も起こり、見なれた風景を血と錆の世界に一変させます。
今回は視聴者の大半が身近に感じるであろう学校やショッピングモールが異界化し、異形のクリーチャーが徘徊する悪夢そのものといった場所に変貌します。
サイレントヒルに入ってから登場する病院は、既にクリーチャーの住みかとなっています。
どことなく怖いところがある病院という建物が、無残で救いのない闇が支配する場所として描写されています。
人形が苦手な人には、それだけで拷問みたいなマネキン工場は、いびつな姿のクリーチャーが暴れ回り、常軌を逸したシーンが展開します。
前作から続く家族愛の物語と俳優の熱演
前作において、娘を戻すためサイレントヒルに残った妻ローズからバトンを引き継いだかのように、父親ハリーは娘を守るため必死です。
教団の魔の手から逃れるため、偽名を使い各地を転々とします。
ほどよいやつれ感が、逃亡生活の過酷さを物語っています。
また、前作のエンディングを知っている人は、今作で父のハリーが選んだ「ローズを捜すためサイレントヒルに残る」という選択に胸をえぐられることでしょう。
彼は妻ローズとの約束を守り、必死で娘を守ってきましたが、同時にずっと妻のことを想っていたのです。
教団の脅威がうすれ、娘が18歳になったということで、彼はローズを求め廃墟のようなサイレントヒルの街に姿を消します。
原作ゲーム同様、家族愛がしっかり描かれているのです。
ヴィンセントは最初教会の命令でヘザーに近づきましたが、到底悪魔には思えない彼女の言動を見て、考えを改め、自立した存在になります。
高校生のくせに妙な色気がある存在です。
女司祭はメイクもあってか、徹底的に人間性が薄い、話の通じなさそうな存在として映ります。
えげつない姿のクリーチャーに変化するのも納得の静かな迫力をもっているのです。
『サイレントヒル:リベレーション3D』のイマイチなところ
ヘザーの残念な老け顔
いろいろ経験しすぎたせいなのか、18歳という設定のヘザーが老け顔になっています。
原作ゲームではそんな設定がないため、俳優のチョイスが独自すぎたのかと。
特にはれぼったい目元が実年齢をぐいぐい引き上げます。
はれぼったい目元は父ハリーにそっくりですが、この二人は血がつながってないので、似せる必要性ないんですよね。
はっきり言ってしまえば、おばさん顔のヘザーが強さと繊細さを表現できたかというと微妙です。
ただ巻きこまれるだけのせわしい展開
ドライバーとしてヴィンセントを使い、サイレントヒルに向かう以外は、ただただ巻きこまれるだけの展開です。
キーアイテムもありますが、何となく拾って何となく使って、それが大成功という締まらない流れです。
ゲームのようにプレイヤーの分身として能動的に調べ、問題を解決し物語を進めていく方式に比べると、どうしてもトラブルに巻きこまれているだけの印象はぬぐえません。
唯一能動的に向かったサイレントヒルに着いてからも、病院→遊園地→教会と転げ回るように移動し、クリーチャーが出現しても逃げるだけです。
前作の主人公ローズは覚悟をもって踏みこんでいく姿勢が見られましたが、今作は運命に翻弄されひたすら流される印象。
物語のテイストが変わる原作の改編
原作ゲーム『サイレントヒル3』から改編された要素が複数あります。
まず、映画序盤で登場しあっさり死亡した探偵ダグラスは、原作では最後まで生き残り、キャラとしてもいい味を出しています。
主人公ヘザーと一緒に現実と異界をうろうろし、ところどころで情報を与えてくれます。
この作品内だとヘザーの素性をバラすだけの存在となっていて、役目がすんだあとはクリーチャーによって処分されています。
改編されて救いになったと言えるのは、父のハリーが死ななかったところ。
原作ゲームの初代『サイレントヒル』であれだけがんばったハリーが、あっさり殺されたのは衝撃的でした。
プレイヤーの絶望を緩和した映画版では、父ハリーが教団にさらわれたという設定に変わっており、物語的には珍しい「少女が誘拐された壮年の父親を助けにいく」という、あまり格好よくない展開となります。
父を殺され、復讐心に燃える少女がサイレントヒルに向かう原作とはかなりテイストが異なるのです。
『サイレントヒル:リベレーション3D』はこんな方にオススメ
『サイレントヒル:リベレーション3D』は下記のような方にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- 原作ゲームが好きな方
- 映画『ヘルレイザー』や漫画『ベルセルク』のような異界化が好きな方
- 独創的なクリーチャーの雄姿を確認したい方
- 前作の映画『サイレントヒル』を視聴ずみの方
- 家族愛が描かれた作品が好きな方
『サイレントヒル:リベレーション3D』を視聴できるVOD
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『サイレントヒル:リベレーション3D』のまとめ
映画『サイレントヒル:リベレーション3D』について、ご紹介しました。
前作に続き、原作ゲームの雰囲気をうまく再現したホラー映画が本作です。
ただ、原作にあるいろんなものを詰めこもうとしすぎて、消化不良になっている印象を受けます。
クリーチャー同士のバトルがあまりにも目立ちすぎて、「主人公って何かしたっけ?」と相対的に存在感が薄くなってしまいました。
しかも、肝心かなめのヘザーが原作と似ていない老け顔なので、原作ゲームのヘザーが好きな人ほどモヤモヤする作品となっています。
異界化の映像やクリーチャーの出来は高水準なので、原作にこだわらない人の方が楽しめるかも知れませんね。
総合評価
なお、前作『サイレントヒル』のレビューを行っていますので、是非ご覧ください。
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今回はビデオゲームが原作の『サイレントヒル』を取り上げていきます。 ビデオゲームの一作目(初代PS)を遊んだことのある筆者としては「よくぞここまであの世界を!」とその再現ぶりに目をみはった映画でもあり ...
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最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
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