交通事故にあったアクティブな女性デイナが、入院先で様々な怪現象に見舞われるのが今作です。
やさしい夫と娘に囲まれた主人公が精神的に壊れていく様子を、古い病院の雰囲気をいかしながら描いています。
洋画には珍しいじわじわ系の恐怖がそこにあります。
ネイルズと呼ばれた殺人鬼がいた過去をもつ病院で、重傷で身動きのとれぬ主人公に何かが迫っていくのです。
それでは、レビューを行っていきます。
あらすじ・作品情報
交通事故で重傷を負った陸上競技コーチのデイナ(ショーナ・マクドナルド)は、生死の境をさまよった末に一命を取り留める。
喉に人工呼吸器を着けられて不自由な入院生活を余儀なくされた彼女は、病室に潜む“ネイルズ”と呼ばれる悪霊に悩まされるようになる。
家族や看護人に訴えるが、ストレスによる幻想だと言われてしまい……。
引用元:Yahoo!映画
2017年に公開された映画です。
『ネイルズ 悪霊病棟』の予告編
『ネイルズ 悪霊病棟』の良かったところ
古びた病院の不気味さ
主人公デイナが入院したのは古いリハビリ系の病院。
医療機器はしっかり揃っているものの、建物自体の老朽化がは進んでいます。
院内は基本的に薄暗く、一部の壁には穴があきスタッフも最低限しか配置されていません。
たとえ変な噂がなくとも病院内で一人ぽつんと夜を過ごすのは気が滅入るのに、事件で何人も患者が死んでいるといういわくつきの病院です。
入院経験がある人ほど「きつっ!」と身震いさせるシチュエーションなのです。
救いは現代の技術によってキーボード入力による読み上げ装置や、離れていても家族と顔を見ながら文字のやりとりができるビデオチャットがあること。
これらはホラー演出の道具としても機能するすぐれものなのです。
リアル過ぎ?痛々しいデイナの傷
早朝ランニング中の事故にあい、二週間もの昏睡状態にあった主人公デイナは満身創痍。
治療で固定されているため最初は右手しか使えず、人工呼吸器によって生命維持を管理されています。
手足はもちろん、年齢よりもずっと若々しい顔も傷まみれ。
劇中の時間経過でゆっくりと治ってはおりますが、両脚は絶賛骨折中で、顔の傷も痛々しいままです。
リハビリと治療のため入院しているはずなのに、身動きできないデイナの脚と胴体が不審者(?)により傷つけられます。
デイナ視点では超常現象のように見える、文字を刻むかのように傷つけられる様子がこれまた痛々しい!
身動きできない状態と相まって、肉体のみならず精神をも無惨に傷つけていくのです。
首がとぶ、手足がもげるなどの派手なグロ描写はありませんが、リアルで想像しやすい傷と痛みの描写が今作の特徴なのです。
登場人物がやたらと美人
アイルランドの土地柄なのか、やたら美人が多いです。
まず、主人公のデイナ自身が陸上のコーチをやるぐらい活動的な美人。
年齢を感じさせぬ引き締まったボディの上に、整った顔をのせています。
そして、娘のジェナがやたらきれい。
年齢の割には大人びていて、ややあどけなさが残っているものの、かなりの美形。
しかも、ジェナは気だてもよい上、勝手に病院の中を探索する子供っぽさも持っています。
やさしいジェナは精神的なダメージも負いつつある母のダイナを健気に支えます。
陸上選手として、新たにダイナ夫妻のコーチングを受けることになったアシュレイも、ダイナが浮気を心配するほどの美人。
そして、熟女枠には院長が待ちかまえます。
病院を管理する側としての厳しさもあり、マニアックな男子のツボを刺激します。
じわじわ系の恐怖演出
『ネイルズ』は洋画のくくりですが、アイルランド人の気質なのか、じわじわ系の恐怖演出が多いです。
どことなくジャパニーズホラーに通じるところがあります。
直接的に襲ってくるシーンもあるのですが、それは少数派で、不気味な何かが底知れぬ悪意をもって迫ってくる描写や演出が多いです。
何かがいるような気配や物音、映像にちらつく影や体に刻まれた言葉……。
薄暗い病院の雰囲気とホラー演出がマッチしています。
ネイルズことエリック・ネルソンの正体が不確かなのも、ホラー要素としては良かったです。
物語的なもやもや感は残るものの、視聴者に恐怖や嫌悪感を提供できていれば、それでお釣りがきます。
ネイルズが死んでからダイナが入院するまでに事故はなかったようなので、彼女との因縁が悪霊と化した彼を、長い歳月を経て呼び寄せてしまった感じでしょうか。
『ネイルズ 悪霊病棟』のイマイチなところ
どこまで幻覚かわからない物語の演出
基本的には入院中の女主人公デイナの視点で語られる今作は、途中から精神にダメージを負ったことによる幻覚が加わり、ややこしい事態になります。
一番確実なのは設置した防犯カメラによる映像なのですが、ネイルズが電子機器にまで影響を及ぼしている描写もあるので、デジタル機器の映像=正しい情報とも言い切れません。
隣室の入院患者からのメッセージも幻覚や幻聴のたぐいかも知れませんし、デイナをより不安定にさせた夫とアシュレイの浮気シーンも、ネイルズの影響と略奪婚の過去が生んだ妄想の可能性があります。
いずれにせよ、主人公デイナの精神が蝕まれていく様子だけはしっかりと伝わってきますけれども。
どうせ幻覚や妄想を使うのだったら、もっと幻想的な恐怖と美しさを両立するような映像を狙っても良かったのではないでしょうか?
クセのある色彩で撮られている作品なので、どうせだったら監督のイマジネーションを解放した方が良かった気がします。
話がストレートすぎませんか?
幻覚と現実がごちゃまぜになるような演出はなされていますが、全体的に話がストレートすぎるかと。
精神科医が語った内容が全て真実だとすると、怪しい精神科医は怪しくなく、全てネイルズと呼ばれた病院の元患者兼スタッフのエリック・ネルソンが原因ということになります。
途中までデイナの妄想オチ含め様々な可能性が示されていたので、「変態殺人鬼ネイルズがデイナ戻ってきたので悪霊として目覚めました。暴れました」で終わるのはもったいなかったです。
全てネイルズのせいにされているものの、爪を集めていた理由や少女たちを殺した理由、自殺した実際の理由などは語られておらず、彼の人物像が掘り下げられることはありませんでした。
話に真実味を加えるため、何かしらの情報は欲しかったです。
もしかして選ばれた少女の爪を全部集めたら、ドラゴンボールのシェンロンみたいな爪神様(仮名)があらわれて「何でも願いをかなえてやろう。ただし爪に関することだけな」と言ってくれるのかも知れませんが、そこまでぶっとんだ作品じゃないので、その可能性は低そうです。笑
もやもやが残る救いのない結末
ホラー映画とハッピーエンドは相容れないものです。
今作でも娘のジェナ以外全滅したとおぼしき終わり方をしております。
しかも、生き残ったジェナも挙動がおかしくなっており、ネイルズの影響を受けたデイナのように精神が蝕まれた可能性があります。
娘のジェナ以外全滅し、そのジェナもまともな状態じゃないので、事件の全貌を語ってくれる者がおらず、ネイルズの謎要素は放置されたままです。
結局は殺人鬼に狙われたデイナの話ということでしょう。
数十年の歳月を経た上で殺された挙げ句、みんなを巻きこむという救われなさです。
デイナが身を挺して娘のジェナを守れたのが唯一の救いでしょうか。
『ネイルズ 悪霊病棟』はこんな方にオススメ
『ネイルズ 悪霊病棟』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- じっとりとした雰囲気のホラー映画が好きな方
- どうせだったら美女が怖がるさまを見たい方
- 病院系ホラーが好きな方
- リアルな傷のメイクを確かめたい方
- 映像機器を使ったホラー表現が好きな方
- 変態悪霊化殺人鬼の暴れぶりを見たい方
『ネイルズ 悪霊病棟』を視聴できるVOD
『ネイルズ 悪霊病棟』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、U-NEXTです!
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『ネイルズ 悪霊病棟』のまとめ
映画『ネイルズ 悪霊病棟』について、ご紹介しました。
古い病院や交通事故の傷でリアリティを稼ぎながら、独特のじっとり感で悪霊化した変態殺人鬼の復活を描くのが本作です。
洋画には珍しいじわじわとくる恐怖がそこにあります。
サービスシーンはほとんどないものの、女性の美人率が高く男性陣がより楽しめる内容になっています。
また、入院経験があり、夜の病院の怖さや孤独を知っている人ほどホラー映画として楽しめます。
ミスディレクションのような情報の仕こみ方をしながらも、結局は主人公を狙った殺人鬼ものに、オカルト要素を足しただけだったのがもったいない感じです。
怪しい精神科医がいい味出していたので、何かあると思ったのですが……。
ジェナ健気でかわいいです。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
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