オカルトものの定石をふまえつつも、随所に工夫がみられるのが『インシディアス』です。
観ていてホラー映画の表現をよく研究している印象を受けます。
また、終盤だけセオリー無視で突っ走っている豪快なところも見られる不思議なバランスの作品です。
本記事はネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。
あらすじ・作品情報
ジョシュ(パトリック・ウィルソン)と妻のルネ(ローズ・バーン)は、3人の子どもと一緒に新しい家に移り住む。
彼らは、多少老朽化してはいるものの、広い家で子育てと仕事に専念するはずだった。
だが、引っ越し直後から屋根裏で奇妙な物音が聞こえたり、勝手に物が移動したりする現象が起こり始め、一家は不安に陥る。
引用元:Yahoo!映画
ホラー映画の中でも特に認知度の高い、『ソウ』シリーズのジェームズ・ワン監督と、『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのオーレン・ペリ監督がメガホンと取った映画です。
『インシディアス』の予告編
『インシディアス』の良かったところ
家族愛に満ちている
ホラー映画の中には、家族仲がしっくりいってない作品もありますが、今作ではいくらか紆余曲折はあるものの、家族仲が非常に良いです。
特に、親から子への愛情は格別なものになっています。
昏睡状態に陥るダルトンぐらいの年齢のお子さんがいる方は、視聴しながら胸に迫るものがあるのではないでしょうか?
最初は心霊現象に懐疑的だった父親ジョシュも、妻の頼みを聞き入れて、すぐに引っ越しをします。
他のホラー映画ならあれこれ理由をつけて引っ越しを先延ばしにするパターンですが、さっくりと引っ越しするのです。
父親から子供への愛情もしっかり描かれていて、母親から息子への愛情は言わずもがな。
細身の体を更にやつれさせ、献身的にダルトンの面倒を見ます。
科学的なアプローチも採用
息子ダルトン昏睡の原因が現代医学でもわからない状態が続き、母親のルネはその解決をオカルト方面へ求めることになります。
その際、エリーズという霊能者が登場するのですが、なんでもかんでも特異な能力に頼ろうとせず、できるだけ客観的な形、記録に残る形で調査しようとします。
露払い的な役割を帯び、下準備のような調査にやってくる二人組がまたいい味を出していて、超常能力バトルになりがちなオカルトものに、日常感と落ち着き、ユーモアをもたらします。
二人組が使う数々の機器に関して、科学的な根拠が示されているわけではないのですが、怪奇現象だらけの物語に対していいアクセントになっています。
特に印象的なのが、ガスマスクに似た装備。
これも科学的な説明はない代物なのですが、圧倒的なインパクトを画面に与えてくれます。
よどみなく明かされる謎
序盤から父親ジョシュにまつわる数々の伏線が張られています。
この伏線の回収がとてもきれいによどみなく行われていて、佳境で過去と向き合い、息子を救うため獅子奮迅の活躍をする父ジョシュの姿へとつながります。
展開も早く、伏線も話のテンポを妨げることなく配置されていて、父親ジョシュにまつわる謎が明かされていく流れは実にスムーズ。
父親ジョシュが幼い頃の写真がない理由、ジョシュの母であるロレインと、霊能者エリーズが知り合いである伏線が自然な形で回収され、視聴者はストレなく最終盤に突入することができます。
あの手この手のホラー演出
ホラー演出としては、家の中に何か潜んでいるようなホーンテッド系が多いです。
過去の作品にみられる演出を参考にしながらも、一本調子にならないよう工夫を凝らしています。
謎の話し声やノイズ、ガラスに浮かぶ手形や、つかまれたような足首の跡、窓の外を横切る人影や、部屋の中で何かが潜む気配。
ひとりでに閉まるドアや、気味の悪い作動を続けるアラーム・・・。
様々な演出がコンスタントに行われ、雰囲気作りはバッチリです。
セキュリティがおかしくなりドアが勝手に開くのは、防犯の面からもリアルで身近な怖さ。
熱演!子役にゴースト役
物語の早い段階で昏睡状態におちいった長男ダルトン役はもちろん、次男役の演技も光っています。
しかし、私が注目したいのはゴースト役の演技!
基本的に台詞がないため、動きと表情だけで演技しなきゃいけません。
複数いるゴースト役の中でもがんばっていたのが、家族皆殺し関連の面々。
特殊メイクの力もありますが、狂気100%といった風情の笑顔は迫力満点!
あんなのがドライブスルーで対応してきたら、いくら笑顔でも心臓止まりかけるわ!!
『インシディアス』のイマイチなところ
序盤だけ謎のPOV風
リアリティを意識しているのか、なぜか序盤だけPOV(主観カメラ)風にカメラが揺れ、視点の移動や音の拾い方もドキュメンタリー風です。
とはいえ、あくまでPOV風。
日常感とリアルさを演出したつもりかも知れませんが、それ以降POV風になるシーンもなく、正直カメラが揺れる分だけ不親切に感じました。
そもそも誰かが撮影しているという形の作品ではありませんが・・・。
序盤だけパラノーマルアクテビティシリーズを意識したのでしょうか?
彼方の描写が惜しい
「彼方」と表現される、近いようで遠いもう一つの世界に関する描写が惜しいと申しますか、微妙な現実感や理屈っぽさがあって、美しさに振り切れていません。
あの世とこの世のはざま的な、幻想に満ちた空間を描写し、監督がもつイマジネーションを解き放つチャンスなのに、中途半端な仕上がりになっています。
もっと幻想的な光景を期待した私は、伏線を回収しようとする意図が見え隠れする「彼方」の世界にすごみを感じませんでした。
目まいがするような鮮烈さも、足が地につかないような幻想の世界もなかったのは残念です。
たとえ美しさではなくても『サイレントヒル』にあったような圧倒的な不快感やおぞましさが表現されていれば、ホラー映画としての質が底上げされたと思います。
直接攻撃はやめて!
様々なホラー演出を配置して盛り上げてきた今作ですが、終盤はやたら霊や悪魔が物理的に突っかかってきます。
じわじわと精神的に追い詰めるような仕掛けのあと、やってくるのは直接攻撃。
「彼方」と呼ばれる世界で、父親ジョシュと霊が取っ組み合いになっているシーンは「結局腕力勝負ですか?」とアメリカのマッチョイズムをはからずも再確認する一幕。
幽霊や悪魔が腕力に訴えてくるスタイルは、どうも日本人が求める恐怖とマッチしないようです。
その他にも、うちに集合してゴーストでぎゅうぎゅうになるシーンは、怖いというより邪魔くさそうと感じました。
「どうせ物理的に扉から入ってきて、つかみかかってくるんでしょ?」と投げやりな心境になって最後は視聴してました・・・。
続編におわせすぎ
本作のエンディングは非常にモヤッとしています。
まるで最初から次回作ありきの終わり方。
確かに続きが観たくなる終わり方ですが、海外ドラマのシーズンフィナーレじゃないんですから、そんな引っ張るような終わり方をしなくていいんです。
海外ドラマなら翌年話の続きが観られる可能性が高いですが、映画は次回作の保証がありませんし、数年後に続編がリリースされた時には、内容を忘れている可能性があります。
映画の中には、ほぼ同時進行で続編も作っていて、翌年に公開するケースもありますが、あくまでレアケースです。
たとえバッドエンドだとしても、すっきり終わらせて欲しかったですね。
『インシディアス』はこんな人にオススメ
映画『インシディアス』は下記のような人にオススメできる映画です。
こんな方にオススメ
- オカルト好きな人
- テンポのよいホラー映画が好きな人
- 家族愛に弱い人
- スレンダー美人(特に人妻)が好きな人
- 霊能者VS悪霊の対決が好きな人
- 狂気に満ちた笑顔が好きな人
- スマートな伏線回収を味わいたい人
- 様々なホラー演出を学びたい人
ホラー要素は言わずもがな、伏線が好きな方など、幅広い方々が楽しめる映画となっています。
『インシディアス』の口コミ
🍓映画感想🍓🎥#インシディアス
家に誰かがいる😱😱😱
見えなかったものが……とても引き込まれる
ストーリー☆☆☆☆実は前に見た事があったんですが、もう一度見ても
怖かったですね〜😱続きがあるので見たいと思います🍓 pic.twitter.com/9RAvCrVL6g
— 映画垢🍓いちご515🍓 (@ichigo___0515) 2018年7月25日
久々にすごく面白い
ホラー映画を見た!!!
インシディアス
是非とも 見ていただきたい。#インシディアス— Fate:美々鈴(みすず)@ただいま一旦日本に帰ってきてます 2月中旬まで (@asuna564219) 2018年3月28日
誰かインシディアスの整理券2枚くださいェン(p´;ω;`q)ェン
(居るわけない)#ユニバーサルスタジオジャパン#ユニバ#USJ#インシディアス#整理券
— 杏 (@05anny13) 2018年11月3日
『インシディアス』を視聴できるVOD
『インシディアス』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、下記の通りです。
オススメVOD
- Amazonプライム・ビデオ
- U-NEXT
Amazonプライム・ビデオ
Amazonプライム・ビデオは月額400円と非常に安価で、多くの映画やドラマ、アニメなどを視聴することができます。
※2019年2月時点の情報です。
また、30日のお試し無料期間が付いているので、まずは無料体験から始めてみましょう!
U-NEXT
U-NEXTの月額料金は少し高いですが、毎月1,200ポイントが付与され、さらに最新作品を他のVODよりいち早く視聴することができます。
※2019年2月時点の情報です。
こちらも、31日のお試し無料期間が付いているので、ぜひ体験してみてください。
『インシディアス』のまとめ
映画『インシディアス』についてご紹介しました。
オカルト系のホラー映画には珍しくテンポの良い作品で、よくねられたホラー演出と伏線回収を見せてくれます。
その反面、ラストのモヤモヤ感も含め、物足りないところがあります。
娯楽作品としては良くまとまっていて、きついグロ描写もないのでさらりと視聴できる作品です。
全編を通して家族愛に満ちているのもいいですね。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
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