予知の力によって大惨事から逃れた主人公たちが、「死ぬべき運命」によって一人また一人と命を落としていくのがファイナル・デスティネーションシリーズです。
今作はその五作目に当たります。
マンネリ化が進んできたシリーズに新しい風をふきこむことはできるのでしょうか?
それでは、レビューを行っていきます。
あらすじ・作品情報
巨大つり橋の崩落事故を予知したサム(ニコラス・ダゴスト)。
予知は現実となり、橋が崩壊して上司や同僚たちが命を落としていくが、サムによって8人が難から逃れる。
しかし、彼らは犠牲になった人の葬儀で会った男から「死神は決してだまされない」と宣告され、死の恐怖におびえることに……。
引用元:Yahoo!映画
2011年に公開された映画です。
「アバター」や「タイタニック」という有名作品に携わったスティーヴン・クエイル監督がメガホンを取りました。
なお、本作品はR18指定となっていますので、ご注意ください。
『ファイナル・デッドブリッジ』の予告編
『ファイナル・デッドブリッジ』の良かったところ
今回は美男美女多め?分かりやすい登場人物
いままで予知の力で生き延びたのは学生たちでしたが、今回の主人公たちは社会人です。
研修旅行に橋が崩落する大惨事に巻きこまれます。
いままでのシリーズでも一人か二人は美男美女枠はいたのですが、今回は主人公サムと元彼女のモリー、友人ピーターとその彼女キャンディスは整った顔かたちをしています。
美男美女だけではなく、定番のゲスキャラやメガネキャラ、黒人キャラ、嫌みな上司キャラもいて、バリエーションに富んでいます。
ファイナルデスティネーションシリーズはどんどん生き残った人が死んでいくので、キャラクターの描き分けは通常のホラー映画以上に重要です。
似たような性格や外見のキャラばかりだと、視聴者が登場人物を把握する前にみんな死んでしまいます。
その点、きっちりキャラが描き分けられている今作は親切です。
「どうせだったら美男美女の物語がいい!」という欲張りな視聴者のニーズにもこたえているのではないでしょうか。
ちょっとしたアクセント?シリーズでは珍しい恋愛要素
今までのシリーズでもカップルはいたのですが、恋愛映画のような切ない要素が盛りこまれることは少なかったです。
今作では主人公サムの海外修行のため、モリーが身を引いて別れているという背景があり、「お互い好き合っているのに別れる」というやるせない状況で物語が始まります。
自分のために別れ話を持ち出したことを知ったサムは、モリーのことがあきらめられず、パリへの海外修行についてきてくれと彼女を説得します。
サムの将来を案じるがゆえに別れたモリーがその申し出を拒否する訳がなく、彼らは再び結ばれます。
結ばれただけで終われば恋愛映画としては申し分ないのですが、いかんせんこれはホラー映画。
しかも、登場人物のほとんどが命をもっていかれるファイナル・デスティネーションシリーズです。
皮肉で残酷な結果が二人を襲うのです。
新機軸の身代わりプラン
マンネリを打破するためか、今回はいつものルールに「身代わりとして誰かを殺せば生き延びられる」というものが追加されます。
これをアナウンスしたのは、一作目にも登場した大柄な検死官。
この怪しさ満点の人が新たな情報をぶっこんでくれます。(ゆえに登場人物が混乱します)
この検死官は呪術的なオカルト要素のあるホラー映画『キャンディマン』で悪霊的な存在キャンディマンを演じた人で、それを知っている人は「この人怪しすぎる!すわ死に神か!」と妄想をはたらかせてしまいます。
とても存在感のあるキャラなのです。
新しい身代わりルールがアナウンスされたために、恋人キャンディスをなくし、精神不安定になっていたピーターが暴挙に出ます。
シリーズでは珍しい「人間VS人間」の戦いが発生するのです。
ゲスキャラは過酷に消えるデス
セクハラマシーンとして各所で迷惑を振りまいているだけではなく、亡くなった同僚の机を漁るようなゲスキャラのアイザックには、そのキャラにふさわしいエンディングが用意されています。
火事の恐怖もさることながら、針灸用のはりがぷよぷよボディに突き刺さるのが実に痛そう。
決して致命傷ではありませんが、悪夢のような展開なのです。
そして、火事の恐怖から逃れたと安堵したところで上からずどん!
ゲスキャラにふさわしい死にざまでした。
じわじわ迫ってくる冒頭の大惨事
今回主人公たちが巻きこまれるのは、研修旅行中の橋の崩落です。
これまでの大事故よりもじわじわ感が強く、精神的に追いこまれていく感じが強いです。
特に、高所恐怖症の人にとっては、一番きつい事故でもあります。
飛行機事故は高所というレベルをこえていますし、爆発するので恐怖を感じる時間がありません。
ジェットコースターも同様にあっという間の出来事です。
しかし、今回の崩落はじわじわと足下に迫っていきます。
死がにじり寄っている過程が目視できてしまうのです。
しかも橋という身近な、人によっては通学や通勤で、毎日使っている構造物での大惨事です。
日常の中に潜む恐怖が、ここぞとばかりに牙をむいてきます。
他の事故では退避する間もなく大惨事が襲ってきますが、今回は「あれ?うまくすれば生き延びられるかも」という崩落スピードなのが憎いです。
生存のチャンスがありながらも、結局は死亡という「希望があるゆえの絶望」が主人公たちを打ちのめします。
シリーズ共通のグロ描写もばっちりで、大惨事の悲惨さを引き立てます。
『ファイナル・デッドブリッジ』のイマイチなところ
水ぬれで出力アップ再び。なぜショートしない?
三作目でも見られた水ぬれによる都合のよい出力アップが再びやってきます。
アメリカの電化製品は水にぬれるとショートせず出力アップする恐ろしい仕様になっているのでしょうか?
レーシック手術を使った恐ろしい演出をするために、ありもしない水ぬれ出力アップを使っている気がします。
確かにレーシックの手術マシンが暴走したら悪夢です。
しかし、悪夢を演出するためにせっかくのリアリティを手放しては本末転倒な気がします。
「あり得ないようで可能性ゼロではない」絶妙なラインをキープして欲しかったです。
三作目の日焼けサロンといい、今作のレーシック手術マシンといい、制作陣はその時話題になった機械に恨みでもあるのでしょうか?
「うちの娘が日焼けサロンに通いまくって別人みたいになった!」「お気に入りのメガネっ子がレーシックで裸眼になってショック!」みたいな制作スタッフ内の不満をぶつけている可能性もゼロではありません。笑
実際に映画を見て「日焼けサロン怖い!レーシック怖い!」と思いこんだ視聴者も何人かいると思います。
なにげに罪作りな作品かも知れませんね。
マンネリ化すすんだ?フェイクの多い死への連鎖
ピタゴラスイッチならぬピタコロすスイッチと呼んでいる、偶然の積み重ねによる死への連鎖は今作でも健在。
ただ、マンネリ化を防ぐためか、ずいぶんとフェイクが多くなった気がします。
体操のキャンディスの場合、スイッチは間接的に作用していますし、アイザックも炎に巻かれると見せかけておいてから、頭上へずどんです。
オリヴィアもレーシック手術マシンにやられると思わせてからの落下死。
(メガネっ子アピールができなくなったから代わりに命を賭してドジっ子アピールをした?)
ストレートにピタコロすスイッチが機能したのは、身代わりのロイとデニス部長のところだけです。
もはやフェイクの方が多いため、ドキドキしながら連鎖を追うシリーズの醍醐味が薄れています。
マンネリ化を打破するためにマンネリがうまれる悪循環がそこにあります。
追加ルールは複雑すぎる?
怪しい検死官が告げるファイナルデスティネーションシリーズの新ルールというべき「身代わり」プラン。
マンネリを打破する効果はあったものの、複雑すぎる気がします。
元々死ぬ運命だった人は身代わりから除外されるという設定は、ロイの「病気でいつ死んでもおかしくなかった」という後出しジャンケンを可能にしてしまいます。
「元々事故で死ぬ予定だった」「病気で死ぬ予定だった」なんて描写が劇中に一切なくとも、制作陣は後出しジャンケンでこれを使うことができます。
「助かったと見せかけておいてからのドーン!」がこれ以上にやりやすくなるわけです。
死ぬ順番に加え身代わりプランも加わるので、これからは誰かが間一髪死の連鎖が逃れたたび「誰かが助けて運命を変えた?それとも身代わり?身代わりだとしたらどこかで死んでる?」と真面目な人ほどいろいろ考えてしまいます。
シンプルだった一作目がなつかしいです。
『ファイナル・デッドブリッジ』はこんな方にオススメ
『ファイナル・デッドブリッジ』は下記のような人にオススメできる映画です!
こんな方にオススメ
- ファイナルデスティネーションシリーズが好きな方
- どうせだったら美男美女が見たい方
- ちょっとした恋愛要素を楽しみたい方
- セクハラ男の悶絶シーンを見たい方
- シリーズの新機軸を確かめたい方
- レーシック手術をする予定のない方
『ファイナル・デッドブリッジ』を視聴できるVOD
『ファイナル・デッドブリッジ』が見放題対象となっているオススメVOD(ビデオ・オン・デマンド)は、U-NEXTです!
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『ファイナル・デスティネーション』シリーズのご紹介
映画『ファイナル・デスティネーション』はシリーズ化されており、全5作からなっています。
シリーズ一覧
- ファイナル・デスティネーション
- デッドコースター
- ファイナル・デッドコースター
- ファイナル・デッドサーキット 3D
- ファイナル・デッドブリッジ
他の作品もレビューしていますので、是非ご覧になってみてくださいね。
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マンネリ化が進むファイナルデスティネーションシリーズの中で、どうにか新機軸を打ち出そうとしたのが今作です。
身代わりとして誰かを殺すという新たなルールを追加し、今までにない展開が見られたものの、後出しジャンケンによる「なんでもあり」状態に突入してしまった感があります。
美男美女が多く、恋愛要素が盛りこまれていたりと、いつもと変わった味付けがされたシリーズ五作目なのです。
総合評価
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の著者の執筆作品
著書名:オブザデッドレビュー34発
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